「自分で辞めると失業保険は 3 ヶ月待ち」── この前提で家計のシミュレーションをしている人、要注意です。2025 年 4 月の改正で、自己都合退職の給付制限期間は 3 ヶ月から 1 ヶ月に短縮されました。退職前にいくら現金を残しておけばいいか、いつから家計が回りはじめるか、改正前後でかなり景色が変わります。
この記事では、自己都合で辞める人が「いつから」「いくら」受け取れるのか、2025 年改正後のルールで整理します。
「いつから」のタイムライン
退職してから初回の振込が口座に着くまでの流れを、6 月 30 日退職の人を例にして並べてみます。
| 日付 | 出来事 |
|---|---|
| 6/30 | 退職(離職日) |
| 7/1〜7/14 | 会社が離職票を発行(通常 2 週間程度) |
| 7/15 | 離職票を受け取り、ハローワークで求職申込み(受給資格決定日) |
| 7/15〜7/21 | 待期 7 日間 |
| 7/22〜8/21 | 給付制限 1 ヶ月間 |
| 8/22 | 給付制限明け、基本手当の支給対象期間が始まる |
| 8/29 | 初回認定日(求職活動実績 2 回以上を申告) |
| 9/3 頃 | 初回振込(認定日から 3〜5 営業日後) |
退職から初回振込まで約 2 ヶ月。「申請してすぐ振り込まれる」と思っていて家計が苦しくなる、というのは、この空白の長さに対する備えが薄いことが原因です。
改正前との比較
2025 年 4 月以前は給付制限が 3 ヶ月 ありました。同じ条件で改正前に退職した人なら、初回振込まで約 4 ヶ月。2 ヶ月の短縮効果 は、生活防衛資金として確保しておく現金を 1 ヶ月分以上減らせるインパクトです。月の固定費が 20 万円の人なら、貯金から 20〜30 万円を取り崩さずに済む計算になります。
「いくら」の決まり方
自己都合退職の総受給額は、基本手当日額(賃金日額 × 給付率 50〜80%)、所定給付日数(被保険者期間で決まる)、満期まで受給できるかどうか ── この 3 つの掛け算で決まります。
詳細な計算式は 失業保険の金額はどう計算する? で扱っているので、ここでは所定給付日数を中心に見ていきます。
自己都合の所定給付日数
| 被保険者期間 | 所定給付日数 |
|---|---|
| 1 年未満 | 受給資格なし |
| 1〜10 年未満 | 90 日 |
| 10〜20 年未満 | 120 日 |
| 20 年以上 | 150 日 |
会社都合(特定受給資格者)と並べると、同じ年齢・同じ被保険者期間でも給付日数は半分以下。たとえば 10〜20 年未満の被保険者期間がある 45〜59 歳の人なら、自己都合 120 日に対して会社都合は 330 日と、210 日の差がつきます。同じ会社で同じ年数働いていても、辞め方の選択で受け取れる総額がここまで動く、ということです。
1 年未満の被保険者期間で退職する場合
被保険者期間が 1 年に満たない場合、自己都合では原則として受給資格がありません。同じ職場に 1 年以上勤続するか、転職して新たに雇用保険に通算で 12 ヶ月以上加入してから離職する、という選択になります。
ただし、退職理由が会社都合や特定理由離職者であれば、6 ヶ月以上の被保険者期間で受給資格が出ます。「1 年未満で辞める」場合は、辞め方を会社都合扱いに寄せられないかを先に検討する価値があります。
計算例: 30 歳・月収 28 万円・自己都合・5 年勤続の D さん
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 賃金日額 | 9,333 円(28 万円 × 6 ÷ 180) |
| 給付率 | 約 66.5%(中間ゾーンのため 80% から 50% へ逓減) |
| 基本手当日額 | 6,205 円 |
| 所定給付日数 | 90 日(自己都合・5 年勤続) |
| 給付制限 | 1 ヶ月 |
総受給額は 6,205 円 × 90 日 = 558,450 円。
待期 7 日 + 給付制限 1 ヶ月を経て支給開始なので、退職から初回振込まで約 2 ヶ月、最終支給まで約 5 ヶ月の長丁場になります。
給付制限を 0 ヶ月にする例外ルート
実は、自己都合退職でも給付制限を 0 ヶ月 にできるケースがあります。狙って使えると効果が大きいので押さえておきましょう。
教育訓練給付の対象講座を受講するパターン — ハローワークで受給資格決定をした後、待期 7 日間の中で教育訓練給付の対象講座を受講開始すれば、給付制限が解除されます。タイミングと講座選定がシビアで、待期 7 日間が満了する前(求職申込みから 7 日以内)に受講をスタートさせる必要があり、講座は厚労省の検索ツールで対象指定講座であることを事前に確認しておく必要があります。受講料は一度自己負担、後日に教育訓練給付で 20〜70% が戻る形なので、初期持ち出しは織り込んでおきましょう。
対象講座にはデータサイエンス、プログラミング、簿記、宅建といった職業直結のものが多く含まれています。「次のキャリア準備」と「給付制限解除」を同時に取りに行ける道筋として、退職前に一度検討しておく価値があります。
ハローワークが「正当な理由のある自己都合」と認定するパターン — 通勤困難(会社移転で通勤時間が片道 2 時間以上になった等)、配偶者の転勤に伴う離職、家族の介護のための離職などは、「特定理由離職者」として給付制限なしで支給開始されます。判定のポイントは、退職届の文面と、ハローワーク窓口での説明内容。該当しそうな事情があるなら、退職届を出す前に文面を整えて、窓口でも経緯を順序立てて説明できるように準備しておいたほうが通りやすくなります。
5 年以内に 2 回以上の自己都合退職は要注意
過去 5 年以内に 2 回以上の自己都合退職をしている人は、給付制限が 3 ヶ月 に戻ります(雇用保険法第 33 条第 1 項ただし書き)。短期間で何度も離職する人には、再就職を促す観点でより長い給付制限を設ける、という設計です。
3 回目以降の自己都合退職を予定している人は、改正後でも 3 ヶ月待ちの前提で生活費を組んでおく必要があります。「最近の改正で 1 ヶ月になったから大丈夫」と思っていると、想定が 2 ヶ月分ずれます。
退職時期の調整で受給額が変わる
退職時期にある程度の選択肢があるなら、次の 2 点を意識すると総受給額が変わってきます。
月末退職と月初退職の違い — 退職日が月末か月初かで、賃金日額の算定基礎期間に含まれる月が変わります。賃金日額は「退職前 6 ヶ月の総支給額 ÷ 180」で計算されるので、賞与の有無は関係ありません(賞与は除外)が、残業代が突出して多い月が算定期間に入るかどうかで結果が動きます。残業代の多寡を月別に把握している人は、有利な月を含むように退職日を寄せる余地があります。
被保険者期間の境目 — 9 年 11 ヶ月の時点で辞めるか、あと 1 ヶ月だけ在籍して 10 年到達してから辞めるかで、所定給付日数が 90 日 → 120 日 に変わります。賃金日額 6,750 円なら、30 日 × 6,750 円 ≒ 約 20 万円の差。会社との合意が必要にはなりますが、退職時期が選べるなら無視できない金額です。
あなたの場合、いくら・いつから受け取れるか
賃金・年齢・被保険者期間を入れれば、2025 年改正後の制度に沿った試算が出ます。