自己都合

10分で読了 ・ 2026/05/06 更新

失業保険、もらうのが本当に得?「もらわない選択」の損得計算

失業保険を受給すると次回受給に向けて被保険者期間がリセットされるため、長期勤続を見越した「あえてもらわない」選択が有利な場合があります。退職時期の最適化・賃金日額の算定基礎期間の選び方・もらわないメリットを試算で整理しました。

「退職したら失業保険は当然もらうもの」── この前提を疑ったことはありますか?

実は 意図的にもらわない ことで、長期的な総受給額を増やせるケースがあります。退職→転職→数年勤続→再離職、というキャリアパスを想定する方は、最初の退職時に受給するかどうかで生涯総額が変わります。

「もらう vs もらわない」の構造

失業保険の受給は次の構造で総受給額に影響します。

もらう選択

  • 即時の生活費補填
  • 給付制限期間中の家計圧迫
  • 受給後は被保険者期間がリセット
  • 次回離職時は新たに積み直し

もらわない選択

  • 即時の生活費補填なし(転職先で給与確保が前提)
  • 被保険者期間が通算継続
  • 次回離職時に給付日数が増える可能性
  • 再就職手当の対象機会を温存

計算例:30歳・自己都合・5年勤続・月収28万円のMさん

5年後(35歳時点)に再離職する想定で、両選択を比較します。

もらってから転職

  • 30歳離職時: 90日 × 6,205円 = 558,450円
  • 受給後すぐ転職、5年勤続
  • 35歳離職時: 被保険者期間5年(リセット後) → 90日 × 7,407円 = 666,630円
  • 通算: 1,225,080円

もらわず転職

  • 30歳離職時: 0円
  • 即時転職、5年勤続
  • 35歳離職時: 通算被保険者期間 10年 → 120日 × 7,407円 = 888,840円
  • 通算: 888,840円

結論

このケースでは 「もらう」が33万円多い。短期スパンでの比較ではもらう方が有利。

ケース別の損得分岐

「もらわない」が有利になるケースを整理します。

ケース①: 長期勤続を見越せる転職

転職先で 15年以上 勤続するなら、もらわない選択が有利になります。

例: 30歳・5年勤続→転職→45歳・15年勤続後に会社都合離職

  • もらう: 30歳90日 + 45歳270日 = 360日分
  • もらわず: 45歳330日 = 330日分

短期的にはもらう方が30日分多いですが、賃金日額の差(30歳のキャリア初期 vs 45歳の管理職クラス)を考慮すると、もらわず選択でも遜色ない結果になることがあります。

ケース②: 5年内2回以上の自己都合退職を避けたい

5年内に自己都合退職を2回以上すると、給付制限が 3ヶ月 に戻ります。

将来的に2回目の自己都合退職をする可能性が高い方は、1回目は「もらわず転職」で 自己都合退職カウント を消費しない選択もあります。

ただし、過去の自己都合離職の回数は受給の有無に関わらずカウントされる解釈もあるため、ハローワークでの確認が必要です。

ケース③: すぐに再就職先が決まっている

退職後にすぐ再就職する見込みがある方は、給付制限1ヶ月を待つ間も無支給。手続きの手間に対して受給額が少ない場合、「もらわず再就職→将来の再就職手当を温存」が有利。

ケース④: 起業・フリーランス転向を予定

退職後に起業する場合、雇用保険受給ではなく 再就職手当(事業開始) の対象となる可能性。事業開始届を提出して6ヶ月以上事業継続すれば、再就職手当が支給されます。

詳しくは再就職手当の完全ガイドを参照してください。

退職時期の最適化(受給する前提)

「もらう」を選んだ場合でも、退職時期の調整で総額が変わります。

最適化①: 被保険者期間の境目を越える

被保険者期間自己都合会社都合(45〜59歳)
9年11ヶ月90日270日
10年0ヶ月120日330日

10年到達まで在籍を1ヶ月延長することで、給付日数が 30〜60日 増加。賃金日額6,750円なら 約20〜40万円の差

最適化②: 残業代が多い月を含める

賃金日額は退職前6ヶ月の総支給額平均で算出。残業代が多い時期を算定基礎期間に含めると、賃金日額が上がります。

例えば年度末の繁忙期(1〜3月)に残業代が多い職種では、4月退職よりも5月退職の方が賃金日額が高くなる可能性。

最適化③: 賞与は除外されることを意識

賃金日額の算定基礎には 賞与は含まれません。賞与支給月(6月・12月等)の前後で退職時期を選んでも、賃金日額には影響しません。賞与を受け取ってから退職するのが家計上有利な場合が多いです。

最適化④: 雇用保険被保険者期間を1ヶ月延ばす

退職届提出から退職日までの期間を調整して、被保険者期間を1ヶ月伸ばすことで、月数の境目を越えるケースがあります。

「もらわない」を選ぶための条件

意図的にもらわない選択をする場合、次の条件を確認します。

条件①: 即時転職可能

転職先が決まっていて、退職→入社の空白期間が短い(1ヶ月以内程度)。

条件②: 生活防衛資金がある

失業保険の代替となる生活費を、貯蓄等で確保できている。

条件③: 長期勤続見込み

転職先で長期勤続できる見込みがあり、被保険者期間の通算メリットを享受できる。

条件④: ハローワークでの求職申込みをしない

求職申込みをすると「受給資格決定」となり、被保険者期間がリセットされる扱いに。受給を始めなくても、決定だけでリセット起点となる解釈があります。

詳しくは一度もらうとどうなる?の記事を参照してください。

「もらう」が有利な代表例

逆に、もらう方が有利なケース。

代表①: 求職活動が長引く可能性

退職後に転職活動が長引く可能性がある方は、生活費補填の意味でもらう価値が大きい。

代表②: 短期再離職の可能性

転職先での長期勤続の見込みが薄い場合、被保険者期間の通算メリットが薄れる。

代表③: 会社都合・特定理由離職者

会社都合・特定理由離職者は給付制限なし、給付日数も多い。受給するメリットが大きい区分。

代表④: 高齢期の退職

定年・嘱託満了等の高齢期の退職は、長期勤続による被保険者期間通算のメリットがほぼない。受給する判断が一般的。

受給を見送る場合の手続き

何もしない、というのが基本です。ただし退職時に注意する点があります。

退職時にすべきこと

  • 離職票・雇用保険被保険者証を会社から受領(捨てない)
  • ハローワークでの求職申込みは しない
  • 即時転職して新たに被保険者となる

受給を見送った後の確認

  • 5年以内に再離職する予定があるかを定期的に再評価
  • 状況変化で「やっぱり受給したい」と判断した場合、離職日翌日から 1年以内 であれば申請可能

損得を試算するシミュレーション

「もらう vs もらわず」の損得は、次の変数で大きく変わります。

  • 現在の被保険者期間
  • 賃金日額
  • 退職理由
  • 次回離職までの想定期間
  • 次回離職時の年齢
  • 次回離職時の賃金日額(昇給見込み含む)

これらを入力すると、両選択の長期総受給額の比較が試算できます。

シミュレーターで自分のケースを計算する →

出典・参考


最終更新: 2026年5月6日 改訂履歴: 2026/04/21 — 初版公開

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