65歳以上

11分で読了 ・ 2026/05/05 更新

65歳になる前に辞めた方がいい?失業保険と年金で損得が変わるケース

65歳の誕生日の前と後で、失業給付の制度そのものが基本手当から高年齢求職者給付金へ切り替わります。受給総額・年金との併給可否・再就職要件で何が変わるのか、4つの観点と試算ケースで整理します。

「定年退職するなら、65歳になる前と後、どちらが得か」── 退職時期を選べる立場の方なら、一度は気になる論点です。

たった1ヶ月の差で、受け取る給付の制度そのものが入れ替わります。受給総額・受給期間・年金との併給可否、すべてが変わる。「64歳11ヶ月で辞めるのが得」とよく言われますが、年金額や再就職の見込み次第で結論はひっくり返ります。4つの観点で整理します。

違い①:受給する給付の種類

最も根本的な違いは、受給する給付制度そのものが切り替わる点です。

64歳11ヶ月までに離職した場合 → 基本手当

通常の失業保険である「基本手当」を受給します。所定給付日数は、被保険者期間と離職理由に応じて決まり、60〜65歳未満の年齢区分では次のとおりです。

区分1年未満1〜5年未満5〜10年未満10〜20年未満20年以上
60〜65歳未満(特定受給資格者)150日180日210日240日
一般受給資格者(自己都合・定年)90日120日150日

被保険者期間が10年以上ある会社員の方であれば、150〜240日の受給が見込まれます。

65歳到達後に離職した場合 → 高年齢求職者給付金

65歳以上で離職した場合、基本手当ではなく 高年齢求職者給付金 という別制度の対象となります。

  • 被保険者期間 1年未満 → 基本手当日額 × 30日分(一時金)
  • 被保険者期間 1年以上 → 基本手当日額 × 50日分(一時金)

「日数」と表現されますが、基本手当のように4週ごとの認定を経て分割で支給されるのではなく、一時金として一括支給される点が大きな特徴です。

違い②:受給総額

具体的な金額で比較します。

20年勤続・月収40万円・自己都合退職のCさんを想定します(賃金日額13,333円、基本手当日額約7,200円)。

離職時期適用制度所定日数総受給額(概算)
64歳11ヶ月基本手当(一般受給資格者・20年以上)150日¥1,080,000
65歳0ヶ月高年齢求職者給付金(1年以上)50日¥360,000

差額は約72万円となります。

ここで考慮すべきは、「64歳までに離職」を選択した場合でも、150日分を実際に受給するためには、4週ごとの失業認定日に求職活動の実績を申告し、失業の状態にあり続ける必要があるという点です。受給開始から最終支給までは半年程度を要します。

一方、高年齢求職者給付金は一時金ですので、申請から振込までの期間は1ヶ月以内が一般的です。

違い③:老齢年金との併給可否

これが最も判断を難しくする要素です。

65歳未満の基本手当 → 老齢年金は支給停止

65歳未満で基本手当を受給する場合、特別支給の老齢厚生年金は支給停止となります。

具体的には、求職申込みをした月の翌月から、基本手当の受給期間中は年金が止まります。基本手当の受給が終了した翌月から、年金の支給が再開される仕組みです。

「基本手当 vs 年金」の二者択一になり、両方を同時に受給することはできません。

65歳以降の高年齢求職者給付金 → 老齢年金と併給可能

これに対して、65歳以上で受給する高年齢求職者給付金は、老齢年金と併給可能です。

つまり、65歳以降に離職した場合、年金は満額受給を継続したまま、加えて高年齢求職者給付金の一時金(基本手当日額 × 50日分)を受け取れることになります。

年金が止まるか止まらないか。この差が、退職時期の判断を大きく左右します。

違い④:再就職への姿勢

第4の差は、制度の性質ではなく、受給する制度の 再就職要件の厳しさ にあります。

基本手当の受給中は、4週ごとの認定日に「失業の状態」と「求職活動の実績」を申告する必要があります。求職活動が不十分と判断されれば、その認定対象期間は不支給となります。実態としては、月に2〜3社への応募や面接が求められる運用です。

高年齢求職者給付金は、求職申込みの段階で受給資格が決定し、認定後に一括支給されます。受給後の継続的な求職活動の証明は不要です。

「再就職する気はあるけど、ペースは自分で決めたい」という方にとっては、高年齢求職者給付金の手続きの簡単さが地味に効いてきます。

試算ケース:年金月額を含めた総合比較

老齢年金との関係も含めて比較すると、どちらが「得」かは年金の見込み額によって変動します。

20年勤続・月収40万円・基本手当日額7,200円の方が、月額18万円の老齢厚生年金を受給する見込みのケースで試算します。

ケースA:64歳11ヶ月で退職(基本手当ルート)

  • 基本手当: 7,200円 × 150日 = 1,080,000円
  • 年金停止期間: 約6ヶ月(受給期間中)
  • 停止される年金額: 18万円 × 6ヶ月 = ▲1,080,000円
  • 実質増額: ¥0

ケースB:65歳0ヶ月で退職(高年齢求職者給付金ルート)

  • 高年齢求職者給付金: 7,200円 × 50日 = 360,000円
  • 年金停止: なし(併給可能)
  • 実質増額: +¥360,000

このケースでは、65歳到達後の離職のほうが約36万円の経済的優位性があります。年金停止の影響が、基本手当の支給額の増分を相殺する結果となるためです。

ただし、年金額が低い方や、被保険者期間が短い方では、結論が逆転する可能性もあります。

注意点:「64歳11ヶ月退職」の落とし穴

「65歳到達直前に退職するのが得」という議論は一部で目にしますが、実態として注意が必要な点が3つあります。

注意①:離職票の発行に時間がかかる

離職票の発行は、退職日から会社経由・ハローワーク経由を経て交付されますので、通常2週間〜1ヶ月程度を要します。「64歳11ヶ月で退職して、65歳到達前に求職申込みを完了する」というスケジュールは、書類遅延で破綻するリスクがあります。

注意②:再就職の可能性

基本手当を満期まで受給するには、所定給付日数の期間中、継続的に求職活動を続ける必要があります。再就職する意思が薄い方が無理に基本手当ルートを選ぶことは、運用上の困難を伴います。

注意③:年金受給開始時期の調整

年金は受給開始時期を選択できる制度です。基本手当受給中の停止を避けるために、年金受給開始時期を後ろ倒し(繰下げ受給)にする選択肢もあります。繰下げ受給では月単位で受給額が増額(最大75歳開始で184%)されるため、長期的な収支まで含めた判断が必要です。

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実際の判断には、ご自身の被保険者期間・賃金日額・年金見込み額の3つを揃えた試算が必要です。シミュレーターで基本手当ルートの目安額を確認いただいたうえで、ねんきんネットの年金見込み額と組み合わせて比較されることを推奨します。

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出典・参考


最終更新: 2026年5月5日 改訂履歴: 2026/05/05 — 令和7年8月賃金日額改定を反映 / 2026/04/28 — 初版公開

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