2026/05/12 更新

60歳定年後の継続雇用満了と失業保険 — 嘱託契約終了後のケース

60歳定年後に継続雇用された方が、嘱託契約満了で離職した場合の失業保険。65歳までは基本手当の対象、65歳以降は高年齢求職者給付金。継続雇用中の賃金低下と高年齢雇用継続給付の併用、定年後5年の最適化を整理しました。

「60歳で一度定年、そこから嘱託で5年働いて、65歳で本当の引退」── このルートを歩んできた方から、退職直前になって「失業保険って自分も対象なの?」と聞かれることが本当に多いです。給料が定年時の6割前後まで下がった状態で5年働いた後の離職なので、もらえるならもらいたい、というのが正直なところだと思います。

結論から言うと、65歳に到達する 前か後か で受け取れる制度が完全に切り替わります。同じ「嘱託満了」でも、誕生日のタイミング次第で受給総額に100万円近い差が出るケースもあるので、退職予定日を会社と決める前に一度整理しておきたいテーマです。

60歳以降の雇用保険はどう扱われるか

60歳から65歳までの嘱託契約期間は、給料が下がっても雇用保険料は通常どおり天引きされます。被保険者としての立場は定年前と変わらないので、離職時には基本手当の対象です。賃金日額の年齢区分上限は60〜64歳で16,940円、基本手当日額の上限は7,623円(令和7年8月改定)。給付率が下がる年齢でもあるので、現役世代と比べると上限額は控えめです。

65歳の誕生日を迎えると区分が変わり、高年齢被保険者 として扱われます。離職した場合に受け取るのは基本手当ではなく 高年齢求職者給付金 ── 30日または50日分の一時金です。代わりに、65歳未満では止められてしまう老齢年金との併給が可能になります。

高年齢求職者給付金の仕組みは高年齢求職者給付金の完全ガイドで詳しく解説しています。

継続雇用満了は「特定理由離職者」

ここがこのケース最大のポイントです。60歳定年後の嘱託契約が更新されずに満了した場合、自己都合ではなく 特定理由離職者 として認定されます。

特定理由離職者の何が嬉しいかというと、給付制限がかからず、所定給付日数も会社都合と同等水準になることです。自己都合だと1ヶ月の給付制限後に支給開始、給付日数も短めに抑えられますが、特定理由離職者なら7日の待期だけで支給が始まります。必要被保険者期間も離職前1年間で6ヶ月以上あれば足ります。

60〜64歳で特定理由離職者と認定された場合の所定給付日数はこのとおりです。

被保険者期間所定給付日数(特定理由離職者)
1年未満150日
1〜5年未満180日
5〜10年未満210日
10〜20年未満240日

会社によっては離職票に「自己都合(契約期間満了)」と書かれてしまうことがあります。ハローワークでの認定時に契約書(嘱託契約の更新有無)を提示すれば訂正されますが、退職前に総務に「離職理由は契約期間満了で書いてください」と一言伝えておくと話が早いです。

計算例:60歳定年後5年継続雇用→65歳満了のVさん

定年前の月収50万円、継続雇用で30万円まで下がった(約4割減)。嘱託契約5年で65歳満了、というよくあるパターンを試算します。

項目
定年前月収50 万円
継続雇用後月収30 万円(4 割減額)
継続雇用 5 年後の賃金日額10,000 円
給付率約 60%(60〜64 歳区分)
基本手当日額6,000 円
所定給付日数180 日(1〜5 年)または 210 日(5〜10 年)

65歳到達直前で離職した場合

基本手当 6,000 円 × 210 日 = 1,260,000 円。半年強の認定期間を経て分割で支給されます。この間は老齢厚生年金(特別支給含む)が停止される点に注意。

65歳到達後で離職した場合

高年齢求職者給付金 6,000 円 × 50 日 = 300,000 円 の一時金。代わりに老齢年金は止まりません。

額面の差は約96万円ですが、年金停止分(月18万円なら半年で108万円)を引き戻すと、65歳到達後のほうが手取りで上回るケースが普通にあります。年金月額が高い人ほど65歳到達後、低い人ほど65歳到達前が有利になりやすい、と覚えておくと判断が早いです。年金額が境目の判断軸になる詳細は65歳前後の退職判断で扱っています。

在職中に効いている「高年齢雇用継続給付」

定年後の継続雇用で 賃金が25%以上下がった 状態で働いている方は、雇用保険から 高年齢雇用継続給付 が毎月支給されているはずです。給与明細に「高年齢雇用継続給付」または「雇用継続給付」と記載されていないか、一度確認してみてください。会社経由で申請する制度なので、本人が手続きをしていなくても受給しているケースが多いです。

対象は60〜64歳の雇用継続中で、賃金低下率に応じて月の賃金の 最大15% が給付されます。65歳到達月で打ち切りです。

定年前 60 万円 → 継続雇用後 40 万円の W さんを例に試算すると、賃金低下率 33.3% で給付率は約 10%。給付額は 40 万円 × 10% = 40,000 円/月 で、5 年(60 ヶ月)の総額は 240 万円 になります。退職後の失業保険より、こちらの在職中補填のほうがインパクトが大きい、という人も少なくありません。

なお、この給付は2025年4月から段階的に縮小される方向で改正されており、2025年4月以降に60歳に到達する人は上限が15%から10%に引き下げられています。すでに受給中の方は経過措置の対象なので、自分がどちらに当てはまるかは会社の総務か最寄りのハローワークに確認しておくと安全です。

退職時期をずらせるなら、3つの軸で比較

退職日を1〜3ヶ月の幅で動かせる立場の方は、次の3つを並べて考えると整理しやすいです。

65歳直前 vs 直後 — これが最大の論点。年金月額が18万円を超える方は65歳到達後のほうが手取りで有利になりやすく、年金が10万円台前半の方は65歳直前で基本手当をフル受給したほうが多くなりやすい、というのが大まかな傾向。ねんきんネットで自分の年金見込み額を確認してから判断してください。

5年勤続の境目 — 嘱託期間が5年に到達すると、特定理由離職者の所定給付日数が180日から210日に上がります。あと1〜2ヶ月で5年到達、という方は、退職日を伸ばすだけで30日分(基本手当日額6,000円なら18万円)増える計算です。

賃金日額が高い時期 — 継続雇用中に段階的に給料が下がる契約だと、賃金日額が高いうちに退職するほうが基本手当日額も高く出ます。退職直前の半年間の総支給額が賃金日額の計算ベースになるので、ボーナス前後の動きも含めて見るとよいです。

あなたのケースで試算する

定年前の月収・継続雇用後の月収・嘱託期間・退職予定時期を入れて、基本手当ルートと高年齢求職者給付金ルートの受給額を並べて比較できます。

シミュレーターで自分のケースを計算する →

出典・参考

あなたの場合の金額を
確認しましょう

年齢・月収・退職理由を入力するだけ。1 分で目安が分かります。

シミュレーターを使う

無料 ・ 登録不要 ・ 2025年改正対応