2026/05/12 更新

高年齢求職者給付金の完全ガイド — 30日 or 50日の判定と老齢年金併給

65歳以上で離職した方が対象の高年齢求職者給付金。被保険者期間1年で判定が30日 or 50日に分かれ、一時金として一括支給。老齢年金との併給可能、申請手続き、給付額の試算、64歳11ヶ月退職との比較を整理しました。

「65 歳を過ぎてから退職することになったが、失業保険ってもらえるんだろうか?」── 雇用延長で 65 歳を超えて働き、いざ辞める段になって調べ始める方は多いです。結論から言うと、65 歳以上で離職した人は基本手当ではなく 高年齢求職者給付金 という別制度の対象になります。月別の支給ではなく一時金で一括支給、しかも基本手当と違って 老齢年金と同時に受け取れる のが大きな特徴です。

64 歳で辞めるか、65 歳まで働いてから辞めるかで総受給額のバランスが変わってくるので、退職タイミングを動かせる方は試算してから決めたほうが後悔が少ないです。

高年齢求職者給付金とは

64 歳までの「基本手当」と並べて見ると違いがはっきりします。

項目基本手当(〜 64 歳)高年齢求職者給付金(65 歳〜)
支給形態月別(4 週ごとの認定)一時金(一括)
給付日数90〜330 日30 日 or 50 日
老齢年金との併給不可可能
給付制限自己都合は 1 ヶ月なし
待期7 日7 日

実務上いちばん効くのは「老齢年金と同時にもらえるか」と「月別か一時金か」の 2 点。基本手当を選ぶと受給期間中は特別支給の老齢厚生年金が止まる仕組みになっているのに対し、高年齢求職者給付金は止まりません。これが「64 歳退職 vs 65 歳退職」の損得を決める決定的な差です。

給付日数の判定

判定は被保険者期間でシンプルに 2 分されます。

被保険者期間給付日数
1 年未満30 日分
1 年以上50 日分

差は 20 日分。賃金日額が高い人ほどこの差が効いてきて、月収 30 万円台でも 10〜15 万円程度の差になります。65 歳以上で離職する方の大多数は、それまでの職歴で被保険者期間が 1 年を大きく超えているので、ほとんどが 50 日分 の対象です。新規雇用で 1 年経たずに辞めるようなレアケースだけが 30 日分側に落ちます。

給付額の計算

計算の骨格は基本手当と同じで、賃金日額 × 給付率で日額を出し、給付日数を掛ければ一時金額になります。

給付額 = 基本手当日額 × 給付日数
基本手当日額 = 賃金日額 × 給付率
賃金日額 = 退職前 6 ヶ月の総支給額(賞与除く) ÷ 180

65 歳以上には 60〜64 歳の上限額 が適用されます(令和 7 年 8 月 1 日改定)。賃金日額の上限が 16,940 円、基本手当日額の上限が 7,623 円。長く高給で勤めていた方ほど、計算上の額より上限で頭打ちになりやすい区分です。

たとえば 65 歳・月収 40 万円・勤続 10 年の T さんで試算してみると、賃金日額 13,333 円、給付率 45 % 前後、基本手当日額がおおむね 6,000 円。被保険者期間 1 年以上なので 50 日分、6,000 円 × 50 日 = 300,000 円 が一時金として一括で振り込まれる、という計算になります。

老齢年金との併給メリット

ここが基本手当と決定的に違うところ。65 歳以降の老齢厚生年金・老齢基礎年金と高年齢求職者給付金は 同時に受け取れます。「失業保険をもらっている間は年金が止まる」というのは 64 歳までの話で、65 歳以降はそれを気にしなくていい設計です。

たとえば 65 歳・月収 40 万円・勤続 10 年・老齢厚生年金が月 18 万円見込みの U さんなら、高年齢求職者給付金 30 万円(一時金)+ 老齢年金 216 万円(年額)= 246 万円 が 1 年目の収入見込み。これを 64 歳のうちに辞めて基本手当を取りに行くパターンと比べると、特別支給の老齢厚生年金が止まる期間(おおむね 5〜6 ヶ月)でほぼ相殺されることが多く、金額の総額自体は大差にならないケースが珍しくありません。

ただし 65 歳側には「手続きが圧倒的に楽」というおまけがあります。4 週ごとに認定日に出頭して求職活動実績を申告する、という面倒な工程がほぼなく、求職申込みと最初の失業認定 1 回で完結。年金との損得比較が拮抗するなら、最後の数ヶ月だけ無理に詰めず 65 歳側に倒すほうが穏当、というのが個人的な感覚です。詳しくは年金と失業保険を同時にもらう方法を参照してください。

申請手続き

必要書類は離職票-1 と離職票-2、マイナンバーカード(または通知カード + 本人確認書類)、印鑑、本人名義の預金通帳。基本手当の申請とほぼ同じ並びです。

流れも基本手当と途中まで同じで、ハローワークでの求職申込みからスタートし、受給資格決定後に 雇用保険受給資格者証 が発行されます。その後 7 日間の待期があり、待期明けに 失業認定(1 回のみ) を受けて、認定後 3〜5 営業日でまとめて一括振込。基本手当のように 4 週ごとに認定日が来てちょっとずつ振り込まれる、ということはありません。1 回の認定で全額が口座に入ります。

申請期限は 離職日翌日から 1 年以内 に求職申込みを済ませること。これを過ぎると受給できなくなるので、退職後はできれば 1〜2 ヶ月以内、遅くとも半年以内には動き出しておきたいところです。「そのうち行く」で 1 年が経つと、丸ごと取り損ねます。

受給後はどうなるか

一時金として一括で受け取った後も、建前としては求職活動を続ける義務が残ります。とはいえ 4 週ごとの認定日や求職活動実績の申告は必要なく、基本手当ほどの拘束感はありません。受給直後にすぐ再就職が決まっても、給付金の返還は不要です(基本手当の「再就職手当・残日数返還」のような調整はなし)。

再就職して、また 65 歳以上で離職した場合は、新たな被保険者期間に応じて再受給可能。ただし新規雇用で 1 年に届いていなければ 30 日分側に落ちる点には注意してください。

65 歳以降の雇用保険まわりの細かい話

65 歳以降に新たに雇用された場合、雇用保険には「高年齢被保険者」という区分で入ります。本人・事業主それぞれに保険料負担があり、離職時には再度この高年齢求職者給付金の対象になります。一方で、65 歳前から同じ会社で 65 歳を超えて勤務している方は「高年齢継続被保険者」となり、離職時の取扱いは高年齢求職者給付金で共通です。区分の名前は違いますが、もらえる中身はほぼ同じ、と思っておいて差し支えありません。

あなたのケースで給付額を試算

退職予定年齢と退職前 6 ヶ月の賃金、被保険者期間を入れれば、64 歳退職時の基本手当と、65 歳退職時の高年齢求職者給付金それぞれの試算額が出ます。年金との損得比較の入口として使ってみてください。

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出典・参考

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