年金

11分で読了 ・ 2026/05/06 更新

年金と失業保険を同時にもらう合法的な方法 — 65歳の壁と回避テクニック

65歳未満では失業保険と特別支給の老齢厚生年金は同時受給できず、基本手当を選ぶと年金が停止します。65歳以降は高年齢求職者給付金と老齢年金の併給が可能。退職時期の選択で総受給額が大きく変わるため、年金額を含めた損得計算を整理しました。

「65歳前に退職すれば失業保険、65歳後に退職すれば一時金で年金併給可能」── このフレーズだけが一人歩きしがちですが、実態はもう少し複雑です。

年金と失業保険の関係は 65歳の前後 で大きく変わります。さらに在職老齢年金・繰下げ受給・繰上げ受給を絡めると、最適解は人によって異なります。年金月額と失業保険の総額を比較する具体的な計算式を整理します。

なぜ65歳が境目なのか

65歳未満と65歳以上で、雇用保険の制度そのものが切り替わります。

退職時年齢適用される雇用保険給付性質
64歳11ヶ月以前基本手当(90〜240日)月別支給・継続的
65歳0ヶ月以降高年齢求職者給付金(30日 or 50日)一時金

そして、この2つの給付は年金との関係が異なります。

基本手当 × 老齢年金: 同時受給不可

65歳未満で基本手当を受給する場合、特別支給の老齢厚生年金は支給停止となります。具体的には:

  • 求職申込みをした月の翌月から年金停止
  • 基本手当の受給が終了した翌月から年金支給再開

「基本手当 vs 年金」の二者択一になり、両方を同時に受給することはできません。

高年齢求職者給付金 × 老齢年金: 併給可能

65歳以降で高年齢求職者給付金を受給する場合、老齢年金は通常通り支給されます。両方を 同時に 受け取ることができます。

計算例:64歳11ヶ月退職 vs 65歳0ヶ月退職

20年勤続・月収40万円・基本手当日額7,200円・月額18万円の老齢厚生年金を受給見込みのLさんを想定します。

ケースA: 64歳11ヶ月で退職(基本手当ルート)

  • 基本手当: 7,200円 × 150日 = 1,080,000円
  • 年金停止期間: 約6ヶ月(受給期間中)
  • 停止される年金額: 18万円 × 6ヶ月 = ▲1,080,000円
  • 実質増額: ¥0

基本手当の総額と、停止される年金額が完全に相殺されています。

ケースB: 65歳0ヶ月で退職(高年齢求職者給付金ルート)

  • 高年齢求職者給付金: 7,200円 × 50日 = 360,000円
  • 年金停止: なし(併給可能)
  • 実質増額: +¥360,000

このケースでは、65歳到達後の退職のほうが 約36万円の経済的優位性 があります。

結論:年金額が高いほど、65歳以降の退職が有利

判定の簡易フローは次の通り。

基本手当の月換算 = 基本手当日額 × 30日
        7,200円 × 30 = 216,000円/月

年金月額 = 180,000円/月

基本手当月換算 > 年金月額? → 64歳までの退職が有利な可能性
基本手当月換算 < 年金月額? → 65歳以降の退職が有利な可能性

詳しくは65歳になる前に辞めた方がいい?の記事で扱っています。

在職老齢年金との関係

「働きながら年金をもらう」場合は、在職老齢年金 という別の論点があります。

在職老齢年金の仕組み

  • 会社に在籍したまま老齢厚生年金を受給する制度
  • 給与+年金の合計額が 50万円(令和7年)を超えると、超過分の年金が一部支給停止

失業保険との関係

退職前に在職老齢年金を受給していた方が、退職して失業保険を受給する場合:

  • 在職老齢年金: 退職と同時に通常の老齢厚生年金として復元
  • ただし基本手当受給中は年金が停止される

退職後に再就職して在職老齢年金が再開する場合は、在職時の調整がまた発生します。

繰下げ受給との組み合わせ

老齢年金は受給開始時期を 繰下げる ことで、月単位で増額されます。

繰下げ年数増額率
1年(66歳から受給)8.4%増
2年(67歳から受給)16.8%増
3年(68歳から受給)25.2%増
5年(70歳から受給)42.0%増
10年(75歳から受給)※2022年改正84.0%増

失業保険との組み合わせ戦略

64歳までに退職→基本手当を受給→年金停止→年金復活時に繰下げ申請、というパターンで:

  • 65歳: 失業保険受給終了 → 年金復活も、繰下げ申請で受給保留
  • 65〜70歳: 年金繰下げ中(受給なし)
  • 70歳: 42%増額された年金を生涯受給

「失業保険で当面の生活費を確保し、年金は繰下げて長期的な手取りを増やす」戦略が可能です。ただし、この戦略は 65歳以降の生活設計 とセットで判断する必要があります。

繰上げ受給は注意

逆に、年金を 繰上げて 受給することも可能ですが、失業保険との組み合わせで不利になりやすいです。

繰上げ受給の仕組み

  • 60歳から65歳の間で、月単位で年金受給を前倒し
  • 月0.4%(年4.8%)の減額(生涯にわたり)

繰上げ + 失業保険のリスク

繰上げ受給中に失業保険を申請すると、年金が 完全停止 されます。停止期間中も年金は復活しないため、「繰上げで減額された年金 + 失業保険受給で停止」という二重の損失。

繰上げ受給は失業保険受給予定の方には推奨しません。

退職時期の最適化フロー

判定の手順を整理します。

ステップ1: 自分の年金月額を把握

  • ねんきんネット(日本年金機構)でアクセス
  • 65歳時点の見込み月額を確認

ステップ2: 基本手当日額を算出

  • 退職前6ヶ月の賃金 ÷ 180 → 賃金日額
  • 賃金日額 × 給付率 → 基本手当日額
  • 基本手当日額 × 30 → 月換算

ステップ3: 比較

比較推奨退職時期
基本手当月換算 > 年金月額 + 数万円64歳11ヶ月退職
基本手当月換算 ≈ 年金月額どちらでも近似
基本手当月換算 < 年金月額65歳0ヶ月退職

ステップ4: 給付日数も加味

64歳11ヶ月退職の基本手当総額(給付日数 × 日額)と、65歳退職の高年齢求職者給付金(30 or 50日 × 日額)+ 6〜12ヶ月の年金併給 を比較。

注意点:「64歳11ヶ月退職」の落とし穴

「65歳到達直前に退職するのが得」という議論には、実態として注意すべき点があります。

注意①: 離職票の発行に時間がかかる

退職→離職票発行まで通常2週間〜1ヶ月。「64歳11ヶ月で退職して、65歳到達前に求職申込みを完了する」というスケジュールは、書類遅延で破綻するリスクがあります。

注意②: 受給期間中の求職活動義務

基本手当の受給には、4週ごとの認定 + 求職活動実績2回以上が必要。再就職する意思が薄い方が無理に基本手当ルートを選ぶことは、運用上の困難を伴います。

注意③: 健康状態

65歳前後の健康状態によっては、求職活動自体が難しい場合があります。受給期間延長制度の活用も含めて、無理のない選択を。

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賃金・被保険者期間・年金見込み月額を入れると、64歳/65歳退職の総受給額比較が試算できます。

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出典・参考


最終更新: 2026年5月6日 改訂履歴: 2026/04/19 — 初版公開

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