「失業保険、結局いくらもらえるか」── 計算式そのものはシンプルです。3つの数字を順に出して、最後に掛け算するだけ。ところが、賃金日額の "賃金" には何が含まれるのか、給付率は年齢別にどう変わるのか、そのあたりで実際の金額が 同じ年収でも10〜20%変動するケースが出てきます。
この記事では、計算式を3要素に分解して、それぞれの調達方法と、引っかかりやすい論点を整理します。
全体像:3要素を順に出す
最終的な総受給額は、次の式で決まります。
総受給額 = 基本手当日額 × 所定給付日数
この基本手当日額が、さらに2要素に分解されます。
基本手当日額 = 賃金日額 × 給付率
つまり、3要素を順に出していけば計算は完了します。
- 賃金日額 ← 退職前6ヶ月の賃金から出す
- 基本手当日額 ← 賃金日額に給付率を掛ける
- 所定給付日数 ← 年齢・被保険者期間・退職理由で決まる
順に見ていきます。
要素①:賃金日額の出し方
賃金日額の算定式は次のとおりです。
賃金日額 = 退職前6ヶ月の総支給額 ÷ 180
ここで「総支給額」が何を指すかを正確に押さえる必要があります。
含めるもの
- 基本給
- 月例の家族手当・住宅手当・役職手当
- 通勤手当
- 月例の残業代
除外するもの
- 賞与(ボーナス)
- 退職金
- 結婚祝金などの臨時手当
「ボーナスを除いた額の半年分 ÷ 180」と覚えるのが実用的です。年収500万円・うち賞与100万円の方の場合、月額(500−100)÷ 12 ≈ 33.3万円。賃金日額は33.3万円 × 6 ÷ 180 = 11,111円となります。
「年収から逆算したら賃金日額が高いはず」と感じる方が多いのは、賞与が入っているケースです。賞与が年間4ヶ月分(年収の25%程度)出ている場合、賃金日額の算定基礎は実質的に 年収の75%相当 ÷ 12 ÷ 30 とほぼ等しくなります。
上限・下限(令和7年8月1日改定)
賃金日額には年齢区分ごとの上限・下限があります。
| 年齢区分 | 上限額 | 下限額 |
|---|---|---|
| 29歳以下 | 14,510円 | 3,014円 |
| 30〜44歳 | 16,110円 | 3,014円 |
| 45〜59歳 | 17,740円 | 3,014円 |
| 60〜64歳 | 16,940円 | 3,014円 |
上限を超える賃金日額の方は、年齢区分の上限額が適用されます。年収1,000万円超の方が、賃金日額算出だと17,740円(45〜59歳)で頭打ちになるのは、この上限の影響です。
要素②:給付率と基本手当日額
賃金日額が出たら、給付率を掛けて基本手当日額を出します。
給付率は 50〜80% の範囲で、賃金日額が低いほど高率になる累進設計です。年齢区分が60〜64歳の方のみ、給付率の下限が 45% まで下がります。
給付率の早見ゾーン(30〜59歳共通)
| 賃金日額 | 給付率 |
|---|---|
| 5,340円未満 | 80%(最高) |
| 5,340〜13,140円 | 80%から50%へ徐々に下がる |
| 13,140円超 | 50%(一律) |
中間ゾーンでは、賃金日額が上がるほど給付率が少しずつ下がる仕組みです。「賃金日額がいくらだと、結局いくら出るのか」を直接見たい方は、下の表が早いです。
賃金日額ごとの支給額イメージ
| 賃金日額 | 年齢 | 基本手当日額 |
|---|---|---|
| 6,000円 | 35歳 | 4,647円 |
| 9,000円 | 35歳 | 5,933円 |
| 17,000円 | 29歳 | 7,255円(上限) |
| 2,500円 | 35歳 | 2,411円(下限) |
賃金日額が13,140円を超えると給付率は50%で固定。さらに年齢別の上限額(次表)に達すると、そこで頭打ちです。
基本手当日額の上限(令和7年8月1日改定)
| 年齢区分 | 上限額 |
|---|---|
| 29歳以下 | 7,255円 |
| 30〜44歳 | 8,055円 |
| 45〜59歳 | 8,870円 |
| 60〜64歳 | 7,623円 |
下限は全区分共通で 2,411円 です。
端数の扱いは 1円未満切り捨て。「6,750.4円」の場合は6,750円になります。
要素③:所定給付日数
総受給額の最後の要素は、何日分受け取れるかです。所定給付日数は退職理由・年齢・被保険者期間の3軸で決まります。
一般受給資格者(自己都合・定年)
| 被保険者期間 | 所定給付日数 |
|---|---|
| 1年未満 | 受給資格なし |
| 1〜10年未満 | 90日 |
| 10〜20年未満 | 120日 |
| 20年以上 | 150日 |
被保険者期間1年未満は、原則として受給資格そのものが発生しません(退職理由が会社都合・特定理由離職者であれば6ヶ月以上で資格発生)。
特定受給資格者・特定理由離職者(会社都合等)
| 年齢区分 | 1年未満 | 1〜5年未満 | 5〜10年未満 | 10〜20年未満 |
|---|---|---|---|---|
| 30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 |
| 30〜35歳未満 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
| 35〜45歳未満 | 150日 | 240日 | 270日 | 270日 |
| 45〜60歳未満 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
| 60〜65歳未満 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
最長は45〜60歳未満・10〜20年未満の 330日。同じ年齢でも、自己都合(150日)と会社都合(330日)で2倍以上の差が生まれます。
計算例:35歳・月収30万円・自己都合・5年勤続
実際の数値で組み立ててみます。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 月額賃金(賞与除く) | 300,000円 |
| 賃金日額 | 10,000円(30万円 × 6 ÷ 180) |
| 給付率 | 67.5%(賃金日額が中間ゾーン) |
| 基本手当日額 | 6,750円(10,000円 × 67.5%) |
| 所定給付日数 | 90日(自己都合・5年勤続) |
| 総受給額 | 607,500円(6,750円 × 90日) |
90日分を全期間受給した場合の総額です。実際には自己都合の場合、待期7日 + 給付制限1ヶ月(令和7年4月以降)を経て初回支給開始となるため、最終支給までは半年程度を要します。
計算例:50歳・月収50万円・会社都合・18年勤続
会社都合で給付日数が最長330日になるケースです。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 月額賃金(賞与除く) | 500,000円 |
| 賃金日額 | 16,667円(50万円 × 6 ÷ 180) |
| 適用される賃金日額 | 17,740円が上限だが今回は17,740円未満 → 16,667円 |
| 給付率 | 50%(13,140円超で一律50%) |
| 基本手当日額(計算上) | 8,333円 |
| 適用される基本手当日額 | 8,870円が上限 → 上限8,333円 < 上限8,870円なので8,333円 |
| 所定給付日数 | 330日(45〜60歳未満・10〜20年未満・会社都合) |
| 総受給額 | 約2,749,890円(8,333円 × 330日) |
実際の支給では、賃金日額の算定基礎の取り方や残業代の扱いで ±3% 程度の誤差が出る可能性があります。
注意点:「総支給額の半分」ではない
「失業保険は給与の半分が出る」という説明をよく目にしますが、正確ではありません。
- 算定基礎は 賃金(賞与除く) の半年分。年収比だと給与30〜40%相当
- 給付率は所得が低いほど高い。月収20万円の方は実質給付率80%、月収50万円の方は実質50%
- 上限額の影響で、高所得の方は給付率が見かけ上下がる
「年収の半分」の感覚で家計設計すると、実際の支給額が下回り、家計が厳しくなる事例があります。賃金日額の正確な算定が、家計シミュレーションの起点となります。
あなたの場合、いくらになるか
退職前6ヶ月の月別賃金、年齢、被保険者期間、退職理由──この4つを入れれば、シミュレーターが上記の計算をすべて実行します。
出典・参考
最終更新: 2026年5月5日 改訂履歴: 2026/05/05 — 令和7年8月賃金日額改定を反映 / 2026/04/15 — 初版公開