2026/05/12 更新

失業保険の金額はどう計算する? 賃金日額 × 給付率 × 日数の 3 要素で出る

失業保険(基本手当)の金額は「賃金日額」「基本手当日額(給付率)」「所定給付日数」の 3 つで決まります。退職前 6 ヶ月の賃金から賃金日額を出し、年齢区分の給付率(50〜80%)を掛け、所定給付日数を掛けるだけ。具体例と早見表で計算方法を整理します。

「失業保険、結局いくらもらえるの」── 退職を考え始めた人がまず気になるのがここです。計算式そのものはシンプルで、3 つの数字を順に出して最後に掛け算するだけ。ところが、賃金日額の「賃金」に何を含めるのか、給付率は年齢別にどう変わるのか ── このあたりで実際の金額が 同じ年収でも 10〜20% ぶれる ことが起きてきます。

この記事では、計算式を 3 つの要素に分解して、それぞれの出し方と引っかかりやすいポイントを整理します。

全体像 — 3 要素を順に出す

最終的な総受給額は、次の式で決まります。

総受給額 = 基本手当日額 × 所定給付日数

このうち基本手当日額が、さらに 2 要素に分解されます。

基本手当日額 = 賃金日額 × 給付率

つまり、賃金日額 → 基本手当日額 → 所定給付日数の順に 3 つを押さえれば、計算は完了します。賃金日額は退職前 6 ヶ月の賃金から、基本手当日額は賃金日額に給付率を掛けて、所定給付日数は年齢・被保険者期間・退職理由で決まる ── この順で見ていきます。

要素 ① — 賃金日額の出し方

賃金日額の算定式は次のとおりです。

賃金日額 = 退職前 6 ヶ月の総支給額 ÷ 180

ここで「総支給額」が何を指すかを正確に押さえる必要があります。算定基礎に含まれるのは、基本給、月例の家族手当・住宅手当・役職手当、通勤手当、月例の残業代など、毎月支給される賃金。一方で除外されるのは、賞与(ボーナス)、退職金、結婚祝金などの臨時手当です。

「ボーナスを除いた額の半年分 ÷ 180」と覚えるのが実用的です。たとえば年収 500 万円・うち賞与 100 万円の人なら、月額は (500 − 100) ÷ 12 ≒ 33.3 万円。賃金日額は 33.3 万円 × 6 ÷ 180 = 11,111 円となります。

「年収から逆算したら賃金日額がもっと高いはず」と感じる人が多いのは、賞与を含めて計算しているからです。賞与が年間 4 ヶ月分(年収の 25% 程度)出ている人の場合、賃金日額の算定基礎は実質的に「年収の 75% 相当 ÷ 12 ÷ 30」とほぼ等しくなります。

上限・下限(令和 7 年 8 月 1 日改定)

賃金日額には年齢区分ごとの上限・下限が設定されています。

年齢区分上限額下限額
29 歳以下14,510 円3,014 円
30〜44 歳16,110 円3,014 円
45〜59 歳17,740 円3,014 円
60〜64 歳16,940 円3,014 円

賃金日額が上限を超える人は、年齢区分の上限額が頭打ちで適用されます。年収 1,000 万円超の人でも、賃金日額算出で 17,740 円(45〜59 歳)止まりになるのはこの上限の影響です。

要素 ② — 給付率と基本手当日額

賃金日額が出たら、給付率を掛けて基本手当日額を出します。

給付率は 50〜80% の範囲で、賃金日額が低いほど高率になる累進設計です。年齢区分が 60〜64 歳の人だけ、給付率の下限が 45% まで下がります。

給付率のおおまかなゾーン(30〜59 歳共通)

賃金日額給付率
5,340 円未満80%(最高)
5,340〜13,140 円80% から 50% へ徐々に下がる
13,140 円超50%(一律)

中間ゾーンでは、賃金日額が上がるほど給付率がじわじわ下がっていく仕組みになっています。「自分の賃金日額だと結局いくら出るのか」を直接確認したい人には、下の早見表が早いです。

賃金日額ごとの支給額イメージ

賃金日額年齢基本手当日額
6,000 円35 歳4,647 円
9,000 円35 歳5,933 円
17,000 円29 歳7,255 円(上限)
2,500 円35 歳2,411 円(下限)

賃金日額が 13,140 円を超えると給付率は 50% で固定。さらに年齢別の上限額(次の表)に達するとそこで頭打ちです。

基本手当日額の上限(令和 7 年 8 月 1 日改定)

年齢区分上限額
29 歳以下7,255 円
30〜44 歳8,055 円
45〜59 歳8,870 円
60〜64 歳7,623 円

下限は全区分共通で 2,411 円。端数は 1 円未満切り捨て なので、「6,750.4 円」の場合は 6,750 円になります。

要素 ③ — 所定給付日数

最後の要素は、何日分受け取れるか。所定給付日数は退職理由・年齢・被保険者期間の 3 軸で決まります。

一般受給資格者(自己都合・定年)

被保険者期間所定給付日数
1 年未満受給資格なし
1〜10 年未満90 日
10〜20 年未満120 日
20 年以上150 日

被保険者期間 1 年未満は、原則として受給資格そのものが発生しません(退職理由が会社都合・特定理由離職者なら 6 ヶ月以上で資格発生)。

特定受給資格者・特定理由離職者(会社都合等)

年齢区分1 年未満1〜5 年未満5〜10 年未満10〜20 年未満
30 歳未満90 日90 日120 日180 日
30〜35 歳未満120 日180 日210 日240 日
35〜45 歳未満150 日240 日270 日270 日
45〜60 歳未満180 日240 日270 日330 日
60〜65 歳未満150 日180 日210 日240 日

最長は 45〜60 歳未満・10〜20 年未満の 330 日。同じ年齢でも、自己都合(150 日)と会社都合(330 日)で 2 倍以上の差が生まれます。

計算例 — 35 歳・月収 30 万円・自己都合・5 年勤続

実際の数値で組み立てるとこうなります。

項目
月額賃金(賞与除く)300,000 円
賃金日額10,000 円(30 万円 × 6 ÷ 180)
給付率67.5%(賃金日額が中間ゾーン)
基本手当日額6,750 円(10,000 円 × 67.5%)
所定給付日数90 日(自己都合・5 年勤続)
総受給額607,500 円(6,750 円 × 90 日)

90 日分を全期間受給した場合の総額です。実際の自己都合退職では、待期 7 日 + 給付制限 1 ヶ月(令和 7 年 4 月以降は原則 1 ヶ月、5 年以内 2 回目以降の自己都合は 3 ヶ月)を経て初回支給が始まるので、最終支給までは半年程度を見ておきます。

計算例 — 50 歳・月収 50 万円・会社都合・18 年勤続

会社都合で給付日数が 330 日になるケースです。

項目
月額賃金(賞与除く)500,000 円
賃金日額16,667 円(50 万円 × 6 ÷ 180)
適用される賃金日額上限 17,740 円未満のため 16,667 円
給付率50%(13,140 円超で一律 50%)
基本手当日額(計算上)8,333 円
適用される基本手当日額8,333 円(上限 8,870 円を下回るためそのまま)
所定給付日数330 日(45〜60 歳未満・10〜20 年未満・会社都合)
総受給額約 2,749,890 円(8,333 円 × 330 日)

実支給では、賃金日額の算定基礎の取り方や残業代の扱いで ±3% 程度の誤差が出る可能性があります。

「総支給額の半分」という言い方は不正確

「失業保険は給与の半分が出る」という説明をよく見かけますが、現実はもう少し複雑です。算定基礎になるのは賃金(賞与を除く)の半年分なので、年収比でいうと給与の 30〜40% 相当の数字が起点になります。そこに給付率が掛かるわけですが、所得が低いほど給付率が上がる累進設計なので、月収 20 万円の人は実質給付率 80%、月収 50 万円の人は実質 50% といった具合に差が付きます。さらに、高所得層は年齢区分の上限額にぶつかって、見かけ上の給付率がさらに下がります。

「年収の半分」のつもりで家計を組み立てていると、実際の支給額が下回って厳しくなる事例があります。賃金日額の正確な算定が、退職後の家計設計の起点です。

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