退職を考え始めたとき、最初に気になるのは結局のところ「自分の場合いくら入ってくるのか」という金額です。計算式を読み込めば分かるとは言われても、自分の年収・勤続年数・辞め方を当てはめてざっくり総額を見たい、というのが本音。
そこでこの記事では、計算式そのものは別記事(失業保険の金額はどう計算する?)に任せて、「年収 × 退職理由 × 被保険者期間」の典型ケースで総額がいくらになるか を、12 ケースの早見でまとめました。自分に近い行を見れば、おおよその受給総額がつかめます。
早見の前提条件
各ケースは退職前 6 ヶ月の月例賃金(賞与除く・残業代と諸手当を含む総支給額)が均等という前提で計算しています。年齢区分による給付率差は反映済み、令和 7 年 8 月 1 日改定後の基本手当日額・賃金日額上限を適用、端数は 1 円未満切り捨てです。
実際の支給額は、賃金日額の算定基礎期間の取り方や残業代の月別ばらつきで概ね ±3% 程度の幅が出ます。「自分のケースとずれている」と感じたら、月別の総支給額を直接シミュレーターに入れたほうが正確です。
ケース集 ① 自己都合・5 年勤続(給付日数 90 日)
| 年齢 | 月収 | 賃金日額 | 基本手当日額 | 総受給額 |
|---|---|---|---|---|
| 28 歳 | 20 万円 | 6,667 円 | 5,067 円 | 456,030 円 |
| 30 歳 | 25 万円 | 8,333 円 | 5,737 円 | 516,330 円 |
| 35 歳 | 30 万円 | 10,000 円 | 6,750 円 | 607,500 円 |
| 35 歳 | 35 万円 | 11,667 円 | 7,407 円 | 666,630 円 |
| 40 歳 | 40 万円 | 13,333 円 | 6,891 円 | 620,190 円 |
5 年勤続・自己都合の人は所定給付日数 90 日。総受給額はおおよそ 45〜70 万円 のレンジに収まります。
ここで地味に効いてくるのが、待期 7 日+給付制限 1 ヶ月(2025 年 4 月以降)。退職してから最終支給が終わるまでに約 5 ヶ月かかる前提で、生活費を逆算しておく必要があります。
ケース集 ② 自己都合・15 年勤続(給付日数 120 日)
| 年齢 | 月収 | 賃金日額 | 基本手当日額 | 総受給額 |
|---|---|---|---|---|
| 38 歳 | 35 万円 | 11,667 円 | 7,407 円 | 888,840 円 |
| 40 歳 | 40 万円 | 13,333 円 | 6,891 円 | 826,920 円 |
| 45 歳 | 50 万円 | 16,667 円 | 8,333 円 | 999,960 円 |
給付日数 120 日。総受給額は 80〜100 万円 レンジで、月収 50 万円・45 歳の人が上限額(45〜59 歳で 8,870 円)に押される直前のラインに当たります。
ケース集 ③ 会社都合・10 年勤続(給付日数 240 日)
| 年齢 | 月収 | 賃金日額 | 基本手当日額 | 総受給額 |
|---|---|---|---|---|
| 32 歳 | 30 万円 | 10,000 円 | 6,750 円 | 1,620,000 円 |
| 38 歳 | 40 万円 | 13,333 円 | 6,891 円 | 1,653,840 円 |
| 45 歳 | 50 万円 | 16,667 円 | 8,333 円 | 1,999,920 円 |
会社都合・10 年勤続(45〜59 歳)では給付日数が 240 日に伸びます。総受給額 160〜200 万円。給付制限がない分、待期 7 日明けですぐ支給が始まる点も自己都合との大きな違いです。
ケース集 ④ 会社都合・18 年勤続(給付日数 330 日)
最も給付日数が長くなる層(45〜60 歳未満・10〜20 年未満)です。
| 年齢 | 月収 | 賃金日額 | 基本手当日額 | 総受給額 |
|---|---|---|---|---|
| 48 歳 | 40 万円 | 13,333 円 | 6,891 円 | 2,274,030 円 |
| 50 歳 | 50 万円 | 16,667 円 | 8,333 円 | 2,749,890 円 |
| 55 歳 | 60 万円 | 20,000 円(→17,740 円上限) | 8,870 円(上限) | 2,927,100 円 |
総受給額は 220〜290 万円 のレンジ。基本手当日額の上限(45〜59 歳で 8,870 円)に引っかかる月収 50 万円超の人は、見かけの給付率が 50% 以下 に下がります。
雇用保険は「賃金が低いほど高率で給付する」設計(給付率 80% → 50% の累進)なので、高所得者ほど見かけの給付率が下がる、というのはむしろ制度の前提どおりの動きです。低所得層に手厚く回すための財源バランス、と理解しておけば違和感は減ります。
ケース集 ⑤ 60〜64 歳・特殊な給付率レンジ
60〜64 歳は、給付率の下限が 45% に下がります(他の年齢区分は 50%)。
| 月収 | 賃金日額 | 基本手当日額 | 自己都合 120 日(10〜20 年勤続) | 会社都合 240 日 |
|---|---|---|---|---|
| 30 万円 | 10,000 円 | 約 4,990 円 | 598,800 円 | 1,197,600 円 |
| 40 万円 | 13,333 円 | 約 5,800 円 | 696,000 円 | 1,392,000 円 |
| 50 万円 | 16,667 円 | 約 7,500 円(上限 7,623 円) | 900,000 円 | 1,800,000 円 |
定年退職や継続雇用満了の場合、給付制限はかかりませんが、基本手当日額の年齢区分上限が下がるため、総受給額は 45〜59 歳の同じ条件より少なくなります。
ケース集 ⑥ 65 歳以上・高年齢求職者給付金(一時金)
65 歳以上で離職した場合、基本手当ではなく 高年齢求職者給付金 という別制度に切り替わります。
| 被保険者期間 | 給付日数 | 月収 40 万円の場合の一時金 |
|---|---|---|
| 1 年未満 | 30 日分 | 約 174,000 円 |
| 1 年以上 | 50 日分 | 約 290,000 円 |
一時金で一括支給され、老齢年金との併給が可能なのが大きな利点です。詳細は 65 歳になる前に辞めた方がいい? で扱っています。
早見の落とし穴
最後に、早見表だけで判断するときに引っかかりやすい点を 3 つ。
落とし穴 ① 上限額 — 月収 50 万円を超えると、基本手当日額は年齢区分上限(45〜59 歳で 8,870 円)で頭打ちになります。「月収 100 万円なら受給額も倍」とはなりません。
落とし穴 ② 被保険者期間の境目 — たった 1 ヶ月の差で給付日数が大きく変わる境目があります。
| 被保険者期間 | 自己都合 | 会社都合(45〜59 歳) |
|---|---|---|
| 9 年 11 ヶ月 | 90 日 | 270 日 |
| 10 年 0 ヶ月 | 120 日 | 330 日 |
退職時期に多少の裁量があるなら、この境目を意識するだけで 30 日〜60 日分の差が生まれます。月収 30 万円なら基本手当日額 6,750 円として、60 日延びれば約 40 万円。それなりの額です。
落とし穴 ③ 再就職した場合は満額受給できない — 所定給付日数を最後まで使い切るには、その間ずっと「失業の状態」で求職活動実績を申告し続ける必要があります。途中で再就職するとそこで打ち切り。ただし残日数の 70%(または 60%)が再就職手当 として一時金で出る救済があります(詳細は 再就職手当って結局いくらもらえる? で扱っています)。
あなたの年収・年齢で具体額を試算
早見はあくまでざっくりの目安です。月収・年齢・退職理由・被保険者期間を入れれば、自分の条件での総受給額が試算できます。