2026/05/12 更新

失業保険がもらえない時の救済策 — 求職者支援制度の使い方

雇用保険の被保険者期間が足りず失業保険を受給できない方向けの「求職者支援制度」。月10万円の職業訓練受講給付金 + 通所手当 + 無料の職業訓練を組み合わせた救済枠の受給要件・申請方法・対象訓練を整理しました。

「自分は失業保険の対象外だった」「短期間のパートで被保険者期間が足りない」「ずっと個人事業主だった」── 退職や廃業を機にハローワークへ行ったら、窓口で「受給資格がありません」と言われて頭が真っ白になる、というのは珍しくないシーンです。雇用保険から外れていた人にとって、退職後の数ヶ月をどう食いつなぐかは切実な話。

そういう人向けの公的救済枠が 求職者支援制度 です。月 10 万円の職業訓練受講給付金、通所手当(実費)、3〜6 ヶ月の無料職業訓練がセットになっていて、設計の手厚さは失業保険にかなり近づきます。要件と申請の流れを整理します。

求職者支援制度とは

雇用保険の対象外の人(個人事業主廃業組、短期雇用で被保険者期間が足りない人、専業主婦・主夫から再び働きに出る人など)に、職業訓練を通じた再就職支援を提供する公的制度です。主体は厚生労働省、窓口はハローワーク、訓練自体は委託先の民間訓練機関が実施するという三者構成。失業保険の「お金を渡す」のとは少し違って、「技能を身につけながら次の仕事を探す数ヶ月分を、月 10 万円の給付と無料訓練でカバーする」という設計思想です。

給付される内容

支給は 1 つではなく複数の手当の組み合わせです。

職業訓練受講給付金 が月額 10 万円。訓練を受けている期間中ずっと支給され、訓練を修了した時点で支給も終了します。失業保険のように「日額 × 給付日数」で個人ごとに違うのではなく、誰でも一律で 10 万円。

通所手当 として、訓練校までの通学定期券代などが実費で支給されます。月額上限は 42,500 円 で、自宅から訓練校が遠い人ほど効いてきます。

寄宿手当 は、訓練校近くに転居して受講する場合に月額 10,700 円。地方在住で都市部の訓練校に通うケースなどで使われます。

訓練費 自体は 無料。テキスト代や教材費は自己負担で、講座によって数千円から数万円というレンジです。3〜6 ヶ月のフルパッケージで考えると、給付金 + 通所手当の合計でおおむね 60〜80 万円規模、これに無料訓練と専門技能の取得が乗る、という構成になります。

受給要件

3 つの要件を すべて満たす 必要があります。

雇用保険の対象外であること — 雇用保険の被保険者でなく、受給資格も持たない(または受給期間が終了している)こと。失業保険の受給中・受給可能な人は、まず失業保険を優先する建付けです。

ハローワークでの求職申込み — 住所地を管轄するハローワークで求職申込みを済ませ、労働の意思と能力があること。求人を出してもらう必要はなく、申込みそのものができていれば OK。

所得・資産要件 — ここが最大の関門。

項目上限
本人月収8 万円以下
世帯月収25 万円以下
全資産300 万円以下

実務的にいちばん厳しいのが「全資産 300 万円以下」です。預金、株式、投資信託、不動産(自宅は除く)を合算して 300 万円を超えていると対象外になります。個人事業主廃業組の場合、運転資金として残していた預金や、退職時の一時金がそのまま残っているとここで弾かれることがあるので、計算しておきます。

訓練の種類

訓練は大きく 基礎コース実践コース に分かれます。

基礎コースは基本的な PC スキルやビジネスマナーなど、汎用的な土台を作る内容で、期間は 2〜4 ヶ月。職歴のブランクが長い人や、社会人としての基本動作から積み直したい人向けです。

実践コースは実務に直結する専門技能を学ぶ内容で、期間は 3〜6 ヶ月。具体的な分野はかなり幅広く、IT 系(Web デザイン・プログラミング・データ分析)、医療事務・調剤事務、簿記・経理事務、介護職員初任者研修、販売・接客、CAD・機械加工など。住んでいる地域の訓練校で何が開講されているかは時期によって変わるので、ハローワークで最新の開講予定を確認するところから始めます。

申請の流れ

ステップを順に追うと次のようになります。

ハローワークで求職申込み から始まります。通常の求職申込みと同じ手続きで、求人を出してもらう必要はありません。

その後、ハローワーク窓口で 求職者支援制度の対象判定 を受けます。雇用保険対象外であることの確認と、所得・資産要件の書類審査がここで行われます。

判定をクリアしたら 訓練校の選定。希望分野の訓練校を選び、訓練校側の選考(書類審査・面接)を受けます。倍率が高い人気コースもあるので、第 1 志望だけでなく複数の選択肢を持っておくと安全です。

訓練校で合格が出たら 受講申込み を完了させ、訓練開始日を確定。ハローワークから「受講指示」を受領します。この受講指示が、給付金支給の根拠書類になります。

訓練開始後は 訓練を受けながら、月 10 万円の給付金が口座に振り込まれる 状態が、訓練修了まで継続します。

必要書類

申請時に求められるのは、求職申込書、受講申込書、本人収入の証明(給与明細・源泉徴収票など)、世帯収入の証明(住民票・税の証明書など)、預金通帳の写し(資産確認)、マイナンバーカード。所得・資産要件のチェックがあるので、家計まわりの書類はまとめて準備しておくとスムーズです。

訓練中は、訓練校への出席簿管理に加えて、ハローワークへの定期出頭(指定日に窓口で求職活動状況を報告)が必要になります。失業保険の認定日と似た位置づけです。

出席要件

訓練期間中の 出席率 80 % 以上 が、給付金を継続して受け取るための条件。病気などで欠席する場合は、事前にハローワークと訓練校の両方に連絡を入れて、欠席理由を記録に残します。無断欠席を重ねると、出席率が 80 % を割った時点で給付金がストップする可能性があります。これは失業保険の認定日不参加よりも厳格に管理される傾向があるので、訓練選びの段階で「自分が 3〜6 ヶ月、平日昼間にコミットできるか」を冷静に見ておく必要があります。

訓練修了後の就職支援

訓練を修了したら、ハローワーク側で訓練修了者向けの専任アドバイザーがついて、就職支援が続きます。訓練校の修了者を積極採用している企業との橋渡し、履歴書の添削、面接対策など。

訓練科や時期によって幅はありますが、ハローワークの公表値ベースで、修了者の 就職率はおおむね 70〜85 % が 3 ヶ月以内に就職、というレンジ。技能を一定身につけた状態で職を探すので、雇用保険の単純な失業給付期間より「次の職に向かいやすい」設計になっているのが特徴です。

失業保険との違い

並べて比較すると性格の違いがはっきりします。

項目失業保険求職者支援制度
受給資格雇用保険被保険者期間雇用保険対象外
月額賃金日額 × 給付率10 万円定額
期間90〜360 日訓練期間(最大 6 ヶ月)
通所手当訓練受講時のみあり
給付制限自己都合は 1 ヶ月なし

金額面では失業保険のほうが基本的に手厚くなります(特に高給だった人ほど差が開く)。一方で求職者支援制度には所得・資産要件があり、誰でも使えるわけではない代わりに、対象になれば訓練を通じて専門技能を身につけられるという別の強みがあります。「失業保険が使えないから仕方なく」ではなく、技能を積み直す機会として積極的に活用する位置づけです。

ケース:個人事業主廃業の Y さん(35 歳・資産 250 万円)

5 年間の個人事業主活動を経て廃業し、求職活動に切り替えるケースで試算してみます。

雇用保険歴がないので失業保険は受給不可。資産は 250 万円で 300 万円以下の要件をクリア、本人月収もほぼゼロ、世帯収入も 25 万円以下に収まっていれば、求職者支援制度の対象に入ります。実践コース(IT 系)を 6 ヶ月受講するとして、給付金 10 万円 × 6 ヶ月 = 60 万円、通所手当 月 20,000 円 × 6 ヶ月 = 12 万円、訓練費は無料。総額 72 万円 が手元のキャッシュフローに乗り、それに加えて Web 系の専門技能を一通り身につけた状態で職探しに移れる、という形になります。

利用上の注意点

出席率 80 % は厳格に管理 されます。病気や家族の用事で長期に欠席すると、給付停止のリスクが現実的に出てきます。

訓練を最後まで修了することが受給継続の前提。途中で「やっぱり合わなかった」と中途退学すると、その時点で給付がストップします。訓練選びは慎重に。

所得・資産要件は訓練期間中も継続して満たす必要があります。例えば訓練期間中に配偶者の収入が大きく増えると、世帯月収 25 万円を超えて要件外になり、受給停止になる可能性があります。家族構成と収入の見通しもあわせて確認しておきます。

あなたの利用可能性を確認

求職者支援制度の対象判定はハローワークでないと確定できませんが、雇用保険歴・退職前の収入が分かれば、もし失業保険側に該当した場合の試算額(基本手当換算)と比べる材料にはなります。

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