2026/05/12 更新

個人事業主・フリーランスでも失業保険はもらえる?業務委託の判定基準

個人事業主・フリーランス・業務委託で働く方は雇用保険の対象外で、失業保険を受給できないのが原則。ただし過去に会社員だった被保険者期間の活用、求職者支援制度、業務委託でも労働者性が認められる例外ケースを整理しました。

フリーランスとして 3 年やってきた、または独立して屋号を出してから何年か経った ── そんな方が「廃業することになった、失業保険って出るんだっけ?」と気づいて慌てて調べる。よくある話です。会社員時代に給与明細から雇用保険料が引かれていた記憶があるので、つい「自分も対象なのでは」と期待してしまうのですが、結論から言うと 個人事業主・フリーランスの本業は、そもそも雇用保険の対象外。失業保険(基本手当)は受給できません。

ただし諦める前に確認したい筋がいくつかあります。会社員時代の被保険者期間がまだ生きているケース、業務委託の形だけど実態は雇用に近いと判断されるケース、雇用保険ではなく求職者支援制度で月 10 万円の救済枠を取りに行くケース。順番に整理します。

なぜ個人事業主は対象外なのか

雇用保険は「雇われて働いている人」を守る制度です。雇用主との間に指揮命令関係があり、賃金を受け取って労働を提供するという関係が前提にあって、その関係が一方的に切られたとき(あるいは続けるのが難しくなったとき)の生活費を補填する設計。一方で個人事業主・フリーランスは雇用主のいない独立した事業者ですから、そもそも法律上の「雇用」に該当せず、被保険者になることはできません。

具体的には、青色申告でも白色申告でも個人事業主、業務委託契約のみで働くフリーランス、株式会社や合同会社の代表取締役、取締役や監査役などの法人役員(労働者性なし)──このあたりは全員対象外です。法人を作って自分が代表になっていたとしても、自分自身を雇うことはできないので雇用保険には入れません。

過去の会社員時代の被保険者期間を活用する

ここから少し希望のある話です。個人事業主・フリーランスでも、独立する前に会社員として雇用保険に加入していた期間があれば、その期間を使って失業保険を受給できる可能性があります。鍵になるのは 受給期間 という考え方。

雇用保険の受給期間は、原則として 離職日翌日から 1 年 です。この 1 年の間に求職申込みをして所定の手続きを進めれば、会社員時代に積み上げた被保険者期間で受給できます。被保険者期間そのものは、自己都合なら離職前 2 年間で 12 ヶ月、会社都合なら離職前 1 年間で 6 ヶ月あれば足ります。

たとえば 2024 年 3 月に会社を 10 年勤めて退職し、翌 4 月に開業した方が、2025 年 9 月に廃業したとします。この場合、2024 年 3 月退職分の受給期間は 2025 年 3 月で切れているので、2025 年 9 月時点ではもう間に合いません。「起業がうまくいかなかったら戻ってくればいい」と思っていても、何もせずに 1 年経つと使えなくなるのが落とし穴です。

退職後すぐの起業を予定している人へ ── 受給期間延長

ここで重要なのが 受給期間延長 の申請。退職して 30 日以上働ける状態にない理由(妊娠・出産・育児・介護・病気・けがなど)があるときに使うイメージが強い制度ですが、事業を開始する場合も対象 です。最長で 3 年延長できる(原則の 1 年と合わせて最大 4 年)ため、起業して何年か経ってから廃業した場合でも、延長申請をしておけば会社員時代の受給資格を温存できます。

申請の窓口は管轄ハローワーク、申請期限は事業開始日の翌日から 2 ヶ月以内 が原則。退職して開業届を出した直後の、いちばん落ち着かない時期に重なるので忘れやすいのですが、ここを抑えておくかどうかで「廃業時の生活費 100 万円超」が手元に残るかどうかが決まります。

業務委託でも対象になる例外

「自分は業務委託契約だけど、毎日同じ会社に出勤して、上司から指示を受けて、フルタイムで働いている」── このパターンは契約書の名前にかかわらず、実態として雇用関係とみなされ、雇用保険の対象となる可能性があります。いわゆる 労働者性 の判断です。

労働基準監督署や裁判例で使われる判断要素は、仕事の依頼を断る自由があるか、業務遂行で指揮命令を受けているか、勤務時間や勤務場所に拘束があるか、報酬が労働時間に応じて支払われているか(成果報酬ではないか)、機械や器具を会社から提供されているか、他社の仕事を受けられないほど専属性が高いか、といったあたり。これらが複数当てはまるほど「形式は業務委託でも、実態は労働者」という判断に傾きます。

実際に認定を取りに行く場合、まず労働基準監督署または弁護士・社労士に相談して、自分のケースが労働者性を主張できるかを確認するところから。そこから雇用保険の遡及加入手続きに入り、過去の保険料を事業主・本人双方で遡って納付することになります。事業主側の協力が得られないと話が進みにくく、退職後に始めるとどうしても時間がかかります。「自分は業務委託のつもりだったけど、これって労働者じゃないか?」と少しでも引っかかっていた人は、在職中の早い段階で相談しておくのが現実的です。

受給資格がない場合の救済策

過去の被保険者期間も活用できず、業務委託の労働者性も主張できそうにない ── このときに次の選択肢が見えてきます。

求職者支援制度 — 雇用保険の対象外の人向けの公的救済枠。月 10 万円の職業訓練受講給付金と、訓練校までの交通費に当たる通所手当(月額上限 42,500 円)、無料の職業訓練(3〜6 ヶ月)がセットになっています。受給するには、ハローワークで求職申込み済みであること、本人収入が月 8 万円以下・世帯収入 25 万円以下・全資産 300 万円以下といった所得資産要件を満たすことが条件。詳しくは失業保険がもらえない時の救済策を参照してください。

国民健康保険・国民年金の減免 — 廃業後は会社の健保・厚生年金から国民健康保険・国民年金に切り替わります。前年所得が大きく減った場合、国保は世帯所得の減少幅に応じて減額、国民年金は全額免除・4 分の 3 免除・半額免除・4 分の 1 免除の段階制で申請可能。市区町村役場の国保窓口と年金事務所がそれぞれの窓口です。

生活困窮者自立支援制度 — 家賃が払えない状況になりそうなら、住居確保給付金(原則 3 ヶ月、最長 9 ヶ月)の対象になる可能性があります。各市区町村の自立相談支援窓口が入口。失業保険のような所得保障ではありませんが、家賃という固定費を一時的に外に出せる効果は大きいです。

ケース別の受給可能性

イメージしやすいように、典型的なパターンで整理しておきます。

会社員 5 年 → 個人事業主 3 年 → 廃業 — 会社員退職時に受給期間延長を申請していれば、廃業時点で会社員時代の被保険者期間を使って受給可能。延長申請を出していなければ、退職から 1 年経過した時点で受給資格は事実上消滅しています。

会社員 5 年 → 個人事業主 1 年 → 失業保険受給済 → 廃業 — 会社員退職時にすでに失業保険を満期受給していた場合、その時点で被保険者期間はリセット。個人事業主期間は雇用保険被保険者ではないので、廃業時の受給資格は発生しません。

業務委託契約だが実態は雇用関係(5 年) — 労働者性が認められれば、雇用保険の遡及加入を経て通常の受給資格が発生する可能性あり。ただし手続きに時間がかかり、即時の生活費補填には向きません。在職中に動き出すのが鉄則。

純粋なフリーランス(雇用保険歴なし) — 求職者支援制度の利用が現実的な選択肢。月 10 万円 + 職業訓練 + 通所手当で、半年程度の食いつなぎと技能取得を組み合わせる戦略になります。

これから起業する会社員の方へ

すでに退職してしまった方には間に合わない話ですが、これから会社員を辞めて起業を検討している人は、退職時にいくつか押さえておくと後で効きます。

意外と知られていないのが、退職後に起業した人でも条件を満たせば 再就職手当 を受給できるという点。開業届を提出して事業の継続見込みがあること、給付日数の 3 分の 1 以上を残しての開業であることなどの要件はありますが、起業時の運転資金として 50 万円〜100 万円規模が手元に入る可能性があります。詳しくは再就職手当の完全ガイドを参照してください。

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