派遣社員として働いていた方が、契約満了や雇い止めで仕事を失った── このケースで「自分は自己都合扱い? 会社都合扱い?」と判断に迷う方が多くいます。
実は派遣切りは 特定受給資格者または特定理由離職者として認定されるのが原則 です。自己都合扱いとされてしまうと、給付制限1ヶ月+給付日数も少なくなる大きな損失。判定の根拠と交渉ポイントを整理します。
派遣切りの3パターン
派遣社員の離職は実態によって3つに分類されます。
パターン①: 派遣先からの中途解約
派遣先企業の都合で派遣契約が中途で打ち切られるケース。最も「会社都合」に近い扱いです。
- 派遣会社が次の派遣先を斡旋しない場合 → 特定受給資格者
- 派遣会社が次の派遣先を斡旋したが本人が拒否 → 自己都合扱いの可能性
パターン②: 契約満了での雇い止め
契約期間が満了し、更新されないケース。
- 本人は更新を希望していたが叶わなかった → 特定理由離職者
- 本人が更新を希望せず満了 → 自己都合扱い
パターン③: 派遣会社からの解雇
派遣会社自体から解雇されるケース。最も明確に会社都合となります。
- 派遣会社の倒産・事業縮小 → 特定受給資格者
認定区分の違い
3パターンそれぞれの認定区分と給付条件を整理します。
| パターン | 認定区分 | 必要被保険者期間 | 給付制限 | 給付日数 |
|---|---|---|---|---|
| ①派遣先中途解約(次の斡旋なし) | 特定受給資格者 | 1年に6ヶ月以上 | なし | 90〜330日 |
| ②契約満了(更新希望叶わず) | 特定理由離職者 | 1年に6ヶ月以上 | なし | 90〜330日(同等) |
| ③派遣会社からの解雇 | 特定受給資格者 | 1年に6ヶ月以上 | なし | 90〜330日 |
通常の自己都合(12ヶ月以上必要・給付制限1ヶ月・90〜150日)と比較すると、いずれも大幅な優遇 です。
認定の鍵:離職票の離職理由欄
ハローワークでの認定区分は、離職票の離職理由欄 をもとに判定されます。派遣会社が記載する内容が決定的に重要です。
望ましい記載
- 「期間満了による離職(更新希望なし)」(自己都合認定)
- 「期間満了による離職(更新希望あり、会社側の事情で更新せず)」(特定理由離職者認定)
- 「事業主の都合による離職」(特定受給資格者認定)
- 「派遣先の事業所からの中途解約」(特定受給資格者認定)
派遣会社が「自己都合」と記載した場合
- ハローワークで 異議申立て が可能
- 「実態は派遣先からの解約」「更新を希望していたが拒否された」等を主張
- 派遣先からのメール・電話履歴・更新希望を伝えた証拠が役立つ
派遣会社との交渉ポイント
退職時に派遣会社と交渉できる場合の論点。
①: 次の派遣先斡旋の確認
派遣会社が「次の派遣先を斡旋する努力をしたが見つからなかった」と離職票に記載すれば、特定受給資格者として認定されやすくなります。
逆に、派遣会社が斡旋を一切しなかった場合、本人が「斡旋を希望したが拒否された」ことを主張する必要があります。
②: 1ヶ月の不就労期間
派遣社員特有のルールとして、契約満了後 1ヶ月以内 に次の派遣先が決まらない場合、その時点で「離職」となり離職票が発行されます。
派遣会社によっては「次の派遣先を見つけるための猶予期間」として1ヶ月を設定している場合があり、この期間中は離職票発行が遅れることがあります。1ヶ月の不就労期間の終了タイミングを派遣会社に確認しておきましょう。
③: 離職理由の確認
派遣会社から離職票が郵送される前に、記載予定の離職理由を確認できる場合があります。電話や面談で「離職理由欄に何と記載されますか?」と尋ね、認識のずれがあれば交渉する余地があります。
1年未満で派遣切りされた場合
派遣で6ヶ月未満の被保険者期間しかない方は、原則として受給資格がありません。ただし救済策があります。
過去の被保険者期間との通算
過去2年間(自己都合)または1年間(会社都合・特定理由)の他社での被保険者期間と通算可能。前職の被保険者期間 + 今回の派遣の合計が要件を満たせば受給資格があります。
求職者支援制度の利用
被保険者期間が足りず受給資格がない方向けに、求職者支援制度 という救済枠があります。
- 月10万円 + 通所手当
- 職業訓練を受けながら受給
- 雇用保険の被保険者期間がなくても利用可能
詳しくは失業保険がもらえない時の救済策を参照してください。
計算例:35歳・派遣社員・月収25万円・3年勤続のHさん
派遣先からの中途解約で離職したHさんの試算。
自己都合と認定された場合
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 賃金日額 | 8,333円 |
| 基本手当日額 | 5,738円 |
| 所定給付日数 | 90日(自己都合・1〜10年未満) |
| 給付制限 | 1ヶ月 |
| 総受給額 | 516,420円 |
特定受給資格者と認定された場合
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 賃金日額 | 8,333円 |
| 基本手当日額 | 5,738円 |
| 所定給付日数 | 150日(35〜45歳未満・1〜5年未満) |
| 給付制限 | なし |
| 総受給額 | 860,700円 |
差額は 約34万円。さらに支給開始までの空白期間も1ヶ月短縮されます。
派遣切り時にやるべきチェックリスト
退職を告げられた段階から、次の項目を準備します。
派遣特有の論点:労働条件不一致の場合
派遣契約の内容と実際の業務が大きく異なっていた場合、労働条件不一致として 特定受給資格者 に該当する可能性があります。
該当例
- 契約書記載の業務内容と実態が異なる
- 契約書記載の賃金が支払われない
- 契約書記載の労働時間より大幅に長時間労働
このケースは、契約書と実態の相違を客観的に証明する書類(メール・タイムカード等)が必要です。
異議申立ての方法
派遣会社が「自己都合」と記載してしまった離職票に対しては、ハローワークで異議申立てができます。
手順
- ハローワークで離職票を提出する際、離職理由欄に異議がある旨を申告
- 「離職理由」欄に異議を記載する書類を作成
- 異議の根拠(メール・契約書・解約通知書等)を提出
- ハローワークが派遣会社に確認 → 必要に応じ離職理由を変更
異議申立ては難しい印象を持たれがちですが、派遣切りについては実態が明確なケースが多く、認められる事例が多くあります。
あなたのケースで認定区分を判定する
退職経緯・派遣会社の対応・更新希望の有無を入れると、認定区分の可能性と給付額が試算できます。
出典・参考
最終更新: 2026年5月6日 改訂履歴: 2026/04/09 — 初版公開