2026/05/12 更新

派遣切りされたら失業保険は何日?会社都合扱いの判定基準

派遣社員が契約満了で雇い止め・派遣切りされた場合、特定受給資格者または特定理由離職者として認定されれば会社都合と同等の手厚い受給が可能。判定基準・必要書類・派遣会社との交渉ポイント・1年未満の被保険者期間の救済策を整理しました。

派遣先から急に「来月までで」と言われた、契約満了で次の現場の話が出てこない ── 派遣で働いていると、辞め方の境界が曖昧なまま離職票を受け取る場面が珍しくありません。そして手元に届いた離職票の離職理由欄を見て、「えっ、これ自己都合になってる?」と固まる人が一定数います。

実は派遣切りは、本来 特定受給資格者か特定理由離職者として認定されるのが原則。ここで自己都合扱いに流されてしまうと、給付制限 1 ヶ月がつくうえに所定給付日数も大きく削られて、トータルで数十万円単位の差になります。判定の根拠と、派遣会社との詰めどころを順番に見ていきます。

派遣切りの 3 パターン

ひと口に派遣切りと言っても、誰の都合で契約が切れたかで認定区分が変わります。実態は次の 3 つに分かれます。

① 派遣先からの中途解約

契約期間の途中で派遣先企業の事情によって打ち切られるケース。最も「会社都合」に近い扱いになります。

派遣会社が次の派遣先を斡旋してくれない場合は 特定受給資格者、斡旋はあったけれど条件が大幅に下がった等で本人が断った場合は自己都合扱いに振れる可能性があります。「斡旋がなかった」のか「あったけど断った」のかが分かれ目です。

② 契約満了での雇い止め

契約期間は満了し、更新されなかったケース。本人は更新を希望していたのに会社側が更新しなかったのなら 特定理由離職者、本人が更新を希望せず満了させたなら自己都合扱いになります。「更新を希望していた事実」が残っているかが効きます。

③ 派遣会社からの解雇

派遣会社自体の倒産や事業縮小で解雇されるケース。最も明確に 特定受給資格者 となります。離職票の記載でもめる余地が小さい一方、退職金や未払い賃金の方で別の問題が出やすいパターンでもあります。

認定区分の違い

3 パターンの認定区分と給付条件を整理すると次のようになります。

パターン認定区分必要被保険者期間給付制限給付日数
① 派遣先中途解約(次の斡旋なし)特定受給資格者1 年に 6 ヶ月以上なし90〜330 日
② 契約満了(更新希望叶わず)特定理由離職者1 年に 6 ヶ月以上なし90〜330 日(同等)
③ 派遣会社からの解雇特定受給資格者1 年に 6 ヶ月以上なし90〜330 日

通常の自己都合(12 ヶ月以上必要・給付制限 1 ヶ月・90〜150 日)と並べると、いずれも明確に有利です。被保険者期間の要件が半分、給付制限がなく、給付日数も最大で 2 倍以上。「派遣切りで自己都合認定」を黙って受け入れていいケースはまずありません。

認定の鍵となる離職票の離職理由欄

ハローワークでの認定区分は、離職票-2 の離職理由欄 の記載でほぼ決まります。派遣会社が何と書くかが決定的に重要、ということです。

望ましいのは、「期間満了による離職(更新希望あり、会社側の事情で更新せず)」や「事業主の都合による離職」「派遣先の事業所からの中途解約」のいずれかが明記されている状態。逆に厄介なのが、「期間満了による離職(更新希望なし)」と書かれているパターンで、これだと窓口でひっくり返すには本人側の主張と証拠が必要になります。

派遣会社が「自己都合」寄りで書いてしまった場合でも、ハローワークで 異議申立て が可能です。「実態は派遣先からの解約」「更新を希望していたが拒否された」といった主張をするときは、派遣会社や派遣先とやり取りしたメールの履歴、更新希望を口頭でなく書面で伝えた控えなどが効きます。

派遣会社との交渉ポイント

退職時に派遣会社と話せる段階で、押さえておきたい論点が 3 つあります。

① 次の派遣先斡旋の確認 — 派遣会社が「次の派遣先を斡旋する努力をしたが見つからなかった」と離職票に書いてくれれば、特定受給資格者として通りやすくなります。斡旋を一切していない場合は、本人側から「斡旋を希望したが対応がなかった」ことを書面なりメールなりで残しておきましょう。

② 1 ヶ月の不就労期間 — 派遣特有のルールとして、契約満了から 1 ヶ月以内に次の派遣先が決まらなければ「離職」とみなされ、離職票が発行されます。派遣会社によってはこの 1 ヶ月を「次の現場を探す猶予期間」として運用しており、その間は離職票を出してくれません。生活費の段取りに直結するので、いつ離職扱いになるかは早めに確認したほうがいいです。

③ 離職理由の事前確認 — 離職票が郵送されてくる前に、「離職理由欄に何と記載されますか」と電話か面談で聞いておくと事故が減ります。届いてから気付いて訂正を依頼すると、再発行で 1〜2 週間ロスします。

1 年未満で派遣切りされた場合

派遣で 6 ヶ月未満の被保険者期間しかない方は、そもそも受給資格の入り口に届きません。ただし救済の経路が 2 つあります。

ひとつは 過去の被保険者期間との通算。過去 2 年(自己都合)または 1 年(会社都合・特定理由)にさかのぼって、他社での被保険者期間と合算できます。前職の雇用保険被保険者期間と今回の派遣の合計が要件を満たせば、受給資格が発生します。前職の離職票(過去のもの)を捨てずに取っておきましょう、というアドバイスはここに直結します。

もうひとつが 求職者支援制度。雇用保険の受給資格がなくても、職業訓練を受けながら月 10 万円+通所手当を受け取れる別枠の制度です。詳しくは 失業保険がもらえない時の救済策 で扱っています。

計算例: 35 歳・派遣社員・月収 25 万円・3 年勤続の H さん

派遣先からの中途解約で離職した H さんを想定し、自己都合認定された場合と特定受給資格者認定された場合で並べます。

自己都合と認定された場合

項目
賃金日額8,333 円
基本手当日額5,738 円
所定給付日数90 日(自己都合・1〜10 年未満)
給付制限1 ヶ月
総受給額516,420 円

特定受給資格者と認定された場合

項目
賃金日額8,333 円
基本手当日額5,738 円
所定給付日数150 日(35〜45 歳未満・1〜5 年未満)
給付制限なし
総受給額860,700 円

差額はおよそ 34 万円。さらに支給開始までの空白期間も 1 ヶ月縮みます。離職票の記載が変わるだけで、ここまで動きます。

退職を告げられた段階でやっておくこと

辞めることが決まってから離職票が届くまでの間にやっておくと、後で揉めずに済む準備があります。

労働条件不一致のケース

契約内容と実際の業務が大きく違っていた、というケースも派遣では珍しくありません。契約書に書かれた業務内容と実態がかけ離れている、契約書記載の賃金が支払われていない、契約上の労働時間より大幅に長く働かされている ── このいずれかに該当する場合は、労働条件不一致として 特定受給資格者 に振れる可能性があります。

ただしハローワーク側に主張する以上、契約書と実態の差を客観的に示す証拠(業務指示のメール、タイムカード、給与明細など)が必要です。退職前に静かに集めておきましょう。

異議申立ての進め方

派遣会社が自己都合と記載してしまった離職票に対しては、ハローワークで異議申立てができます。窓口で「離職理由欄に異議がある」と申し出て、異議の根拠をまとめた書類と、裏付けになるメール・契約書・解約通知書などを提出します。

その後、ハローワークが派遣会社へ確認を入れ、必要に応じて離職理由が修正されます。「異議申立て」と聞くと身構えがちですが、派遣切りについては実態が明確な事例が多く、認められるケースもよくあります。離職票の記載に違和感があるなら、まずハローワークの窓口で相談してみる、で十分です。

あなたのケースで認定区分を判定する

退職経緯と被保険者期間、賃金が分かれば、特定受給資格者として認定された前提での給付額・給付日数の試算ができます。

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