倒産・解雇・希望退職など、自分の意思によらない離職になった場合、失業保険(基本手当)の受給期間は大きく延長されます。最長で 330 日(45〜59 歳・被保険者期間 20 年以上)と、自己都合退職の最長 150 日と比べて 2 倍以上になる設計です。
ただし「会社都合だから一律に手厚い」と一括りに考えると、実態と合いません。給付日数は 5 段階の年齢区分 × 5 段階の被保険者期間 = 25 通り に細かく分かれていて、同じ「会社都合」でも 90 日で終わる人と 330 日もらえる人がいます。離職日が 1 ヶ月ずれるだけで区分が変わるケースもあるので、自分の交点を正確に押さえておきたいところです。
この記事では、表と判定ロジックを最初に置いて、自分の日数を一発で確認できるように構成しました。
給付日数表(特定受給資格者・特定理由離職者)
判定の元になる表を先に置きます。
| 年齢区分 | 1 年未満 | 1〜5 年未満 | 5〜10 年未満 | 10〜20 年未満 | 20 年以上 |
|---|---|---|---|---|---|
| 30 歳未満 | 90 日 | 90 日 | 120 日 | 180 日 | ― |
| 30〜35 歳未満 | 120 日 | 180 日 | 210 日 | 240 日 | ― |
| 35〜45 歳未満 | 150 日 | 240 日 | 270 日 | 270 日 | ― |
| 45〜60 歳未満 | 180 日 | 240 日 | 270 日 | 330 日 | ― |
| 60〜65 歳未満 | 150 日 | 180 日 | 210 日 | 240 日 | ― |
「20 年以上」の列が「―」になっているのは、若い年齢区分と被保険者期間 20 年以上の組み合わせが実態として成立しにくいためです。30 歳未満で雇用保険加入 20 年というのは現実的にあり得ません。
自分の日数を 3 ステップで確認する
ステップ 1 — 離職時の年齢を確認する
判定の基準は 離職日時点の年齢 です。離職後に誕生日を迎えても区分は変わりません。離職票に記載された離職日を確認し、その日時点で何歳だったかを押さえます。
落とし穴は、44 歳 11 ヶ月で離職した人は「35〜45 歳未満」の区分、45 歳 0 ヶ月で離職した人は「45〜60 歳未満」の区分という点。1 ヶ月の差で給付日数が大きく動くケースがあり、退職時期に交渉余地があるなら、ここを意識する価値があります。
ステップ 2 — 被保険者期間を確認する
被保険者期間は、雇用保険に加入していた期間の通算です。1 社で勤め続けたなら入社日から退職日まで。複数社を渡り歩いた場合は各社の加入期間を合算しますが、過去に基本手当を受給した期間以前はリセット されるため、その分は除外します。
判定の境目は、1 年未満/1〜5 年未満/5〜10 年未満/10〜20 年未満/20 年以上の 5 段階。「12 年 6 ヶ月」は「10〜20 年未満」、「19 年 11 ヶ月」も同じ区分です。20 年到達まであと 1 ヶ月という人は、退職時期を 1 ヶ月後ろ倒しできれば給付日数が増える可能性があります。
ステップ 3 — 表で交点を確認する
ステップ 1 の年齢区分と、ステップ 2 の被保険者期間区分の交点が、所定給付日数になります。
たとえば 50 歳・被保険者期間 18 年で会社都合退職の人は、年齢区分が「45〜60 歳未満」、被保険者期間が「10〜20 年未満」なので、交点は 330 日。これは認定日 4 週ごとに換算しておよそ 12 回分、1 年弱にわたって受給が続く長さです。
「特定受給資格者」と「特定理由離職者」の違い
会社都合に近い扱いを受ける離職者は、厳密には 2 つに分かれます。
特定受給資格者 は、事業主からの一方的な離職要求が原因で職を失った人です。倒産(破産・解散・事業縮小による解雇)、解雇(懲戒解雇を除く)、退職勧奨に応じた退職、賃金の 3 分の 1 以上が支払期日までに支払われない月が連続 2 ヶ月以上または 6 ヶ月中 3 ヶ月以上発生した場合、月 45 時間・3 ヶ月 100 時間・直近 1 ヶ月 80 時間を超える時間外労働が原因で辞めた場合、上司・同僚からの故意の排斥や嫌がらせが原因で辞めた場合、などが該当します。ハラスメント起因の退職もここに含まれる点は意外と知られていません。
特定理由離職者 は、自分から辞める形であっても、やむを得ない事情がある場合の区分です。期間の定めのある労働契約が更新されなかった(本人は更新を希望していた)、体力不足・疾病・負傷による離職、妊娠・出産・育児による離職、父母の死亡・疾病・負傷のための扶養離職などが含まれます。このうち契約更新されなかったケースなど一部の理由は、給付日数も特定受給資格者と同等の扱い になります。
判定はハローワークでの受給資格決定時に行われるので、離職票の離職理由欄が実態とずれていれば、その場で異議申立てが可能です。
受給期間中に満たし続ける 2 つの条件
会社都合退職は給付制限がなく、待期 7 日を過ぎればすぐ支給が始まる ── ここが最大の利点です。一方で、所定給付日数を満額消化するには、次の 2 つを継続して満たす必要があります。
条件 1 — 失業の状態にあること 就業の意思と能力があるのに就職できない状態を指します。病気・けがで当面働けない、妊娠・出産・育児中で就労できない、親族の介護に専念している、1 日 4 時間以上のアルバイトを継続している ── このあたりに該当すると、失業状態と認められず支給停止になります。長期化が見込まれるなら 受給期間延長(最長 3 年)の手続きで、回復後に受給を再開する設計に切り替えるのが得策です。
条件 2 — 認定日ごとに 2 回以上の求職活動実績を申告すること 4 週間に 1 度の失業認定日に、原則として 2 回以上の求職活動実績を申告します。実績として認められるのは、求人への応募(書類選考・面接)、ハローワークの職業相談・職業紹介、公的機関による職業相談・セミナー受講、民間職業紹介事業者による職業相談など。求人を眺めているだけ、求人サイトに登録しただけ、というのは実績にカウントされません。実績不足だとその回の認定対象期間は不支給になります。
330 日まで伸びるケースの試算
50 歳・会社都合・18 年勤続・月収 50 万円の B さんを例にします。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 賃金日額 | 16,667 円(50 万円 × 6 ÷ 180) |
| 基本手当日額の年齢区分上限 | 8,870 円(45〜59 歳) |
| 適用される基本手当日額 | 8,870 円(賃金日額が上限を上回るため上限適用) |
| 所定給付日数 | 330 日 |
| 給付制限 | なし |
総受給額は次のようになります。
8,870 円 × 330 日 = 2,927,100 円(概算)
実支給額は、賃金日額の算定で残業代・通勤手当の扱いが微妙にぶれるため、±3% 程度の幅が出る可能性があります。最終的な確定額はハローワークの審査で決まります。
退職時期に余地があるなら「境目」を意識する
希望退職や退職勧奨など、退職日にある程度の調整余地がある状況なら、表の境目に気を配ると給付日数が変わります。
44 歳 11 ヶ月の人が、退職を 1 ヶ月後ろにずらして 45 歳 0 ヶ月で離職すれば、年齢区分が「45〜60 歳未満」に上がり、被保険者期間 10〜20 年未満の交点が 270 日 → 330 日 に伸びます。同じく、被保険者期間 9 年 11 ヶ月の人が 10 年到達まで在籍を延ばせば、給付日数は 240 日 → 330 日(45〜60 歳未満)に増えます。
ただし、退職時期の調整には会社の合意が必要で、現実には「1 ヶ月の延長」が叶うかどうかは別問題です。給付日数が増えても受給期間中の収入は基本手当のみなので、再就職時期との総合判断にもなります。
あなたのケースを試算する
年齢と被保険者期間に加えて、賃金日額から導いた基本手当日額まで含めた総受給額の試算は、シミュレーターを使うのが早道です。