退職後すぐに直面するのが健康保険の切替。3つの選択肢があり、保険料が大きく異なります。年収500万円の方なら、選択次第で 年間20万円以上 の差が出ることもあります。
3つの選択肢
①: 任意継続(在職時の健康保険組合)
- 退職前に加入していた健康保険を最長2年間継続
- 保険料は 退職時の給与水準 で算定(労使折半でなくなり、本人全額負担)
- 退職日から 20日以内 に申請
②: 国民健康保険
- 市町村が運営する公的健康保険
- 保険料は前年所得ベース
- 申請期限: 退職日翌日から 14日以内(市町村による)
③: 配偶者の扶養
- 配偶者が会社員・公務員等で健康保険被扶養者の対象
- 本人の年収が 130万円未満
- 失業保険受給中は一部制限あり
保険料の比較例
ケース: 35歳・年収500万円・配偶者あり・子1人のSさん
任意継続
- 在職時の標準報酬月額: 38万円
- 任意継続の標準報酬月額の上限: 30万円(健保組合により異なる)
- 月額保険料: 30万円 × 約10% = 約30,000円
- 年額: 約36万円
国民健康保険(自己都合退職)
- 前年所得: 約400万円(所得控除後)
- 市町村による差はあるが、概算で年額 約45〜55万円
- 月額: 約4〜4.5万円
国民健康保険(特定受給資格者・特定理由離職者の軽減後)
- 前年所得 × 30/100 = 約120万円で算定
- 年額: 約15〜20万円
- 月額: 約1.3〜1.7万円
配偶者の扶養
- 保険料: 0円
- ただし失業保険受給中(基本手当日額3,612円以上)は扶養から外れる必要
結論
| 選択肢 | 年額 | 適用条件 |
|---|---|---|
| 配偶者の扶養 | 0円 | 配偶者が被保険者・年収130万円未満 |
| 国保(軽減後) | 約15〜20万円 | 特定受給資格者・特定理由離職者 |
| 任意継続 | 約36万円 | 一般に上限ある |
| 国保(軽減なし) | 約45〜55万円 | 自己都合退職者 |
このケースでは、特定理由離職者なら国保の軽減措置を活用、自己都合なら任意継続が有利。
任意継続のメリット・デメリット
メリット
- 在職時の健康保険を継続使用(病院・かかりつけ医がそのまま使える)
- 扶養家族も継続加入可能
- 高額療養費制度等の付加給付がある健保組合なら継続適用
デメリット
- 保険料が 本人全額負担 になり、在職時の約2倍
- 標準報酬月額に上限あり(健保組合により異なる)
- 退職日から 20日以内 の申請が必須。期限超過で利用不可
国民健康保険のメリット・デメリット
メリット
- 任意継続と比較して保険料が安いケースあり(特に低所得者)
- 特定受給資格者・特定理由離職者の軽減措置 を活用できる
- 期限が比較的緩い(14日以内が原則だが、後日でも加入可能)
デメリット
- 保険料は前年所得ベース。退職した年は前年の高い所得で算定される
- 健保組合の付加給付が利用できない
- 自治体による保険料の差が大きい
配偶者の扶養のメリット・デメリット
メリット
- 保険料 0円
- 手続きが配偶者の会社経由で簡単
デメリット
- 年収130万円未満の条件
- 失業保険受給中(基本手当日額3,612円以上)は扶養から外れる
- 受給開始時に扶養脱退手続き、受給終了時に再加入手続きが必要
特定受給資格者・特定理由離職者の国保軽減
制度の概要
国民健康保険料の 前年給与所得を 30/100 として算定
通常の前年所得ベースから大幅に減額された保険料となります。
対象者
- 特定受給資格者(倒産・解雇・退職勧奨等)
- 特定理由離職者(契約満了・正当な理由ある自己都合)
申請方法
- 市町村の国民健康保険窓口で申請
- 雇用保険受給資格者証の離職理由番号を提示
- 申請期限: 離職翌日の翌月から 2年間
軽減対象の方は、このメリットだけで国保が優位になります。
退職前後の手続き
退職前にやるべきこと
- 健保組合に「任意継続の保険料」を問い合わせ(事前見積もり)
- 市町村に「国保の保険料」を問い合わせ(前年所得ベースの見積もり)
- 配偶者の扶養に入れるか確認
- 特定受給資格者・特定理由離職者の認定を受ける見込みかをハローワークで事前確認
退職翌日〜14日
- 健康保険証の返却(在職時の健康保険組合へ)
- 国民健康保険または任意継続の手続き
任意継続の手続き
- 退職日から 20日以内 に健保組合へ申請
- 必要書類: 任意継続被保険者資格取得申請書、住民票、口座振替依頼書
- 保険料は2年分前納で割引あり
失業保険受給中の扶養脱退
配偶者の扶養に入っている方が失業保険を受給する場合、受給開始日に扶養から外れる必要があります。
扶養脱退の手続き
- 配偶者の会社の健康保険組合に通知
- 健康保険証を返却
- 国民健康保険に加入
受給終了後の再加入
- 失業保険受給終了後、再度配偶者の扶養に入る
- 配偶者の会社経由で手続き
この一時的な扶養脱退・再加入の手続きが煩雑なため、配偶者の扶養を選ぶ際は受給期間中の対応を計算に入れる必要があります。
あなたのケースで最適な選択を試算
年収・退職理由・配偶者の収入・前年所得を入れると、3選択の保険料比較が出ます。
出典・参考
最終更新: 2026年5月6日 改訂履歴: 2026/04/30 — 初版公開