2026/05/12 更新

失業保険は確定申告が必要?税金・社会保険・扶養への影響まとめ

失業保険(基本手当)は非課税のため確定申告は不要。ただし、退職前の給与は申告対象、配偶者の扶養に入る場合の年収判定、国民健康保険の軽減措置、住民税の支払い等、退職後の税金・社会保険には複数の論点があります。すべて整理しました。

「失業保険って税金かかるの?」「夫の扶養に入れる?」「確定申告って必要なんだっけ?」── 退職して数ヶ月経つと、必ず一度はぶつかる疑問です。会社員時代は年末調整で勝手に終わっていたものを、退職した年から自分で考えないといけなくなる。何から手をつけるか分からなくなる人は珍しくありません。

結論を先に言うと、失業保険そのものは非課税 です。確定申告書にも書く必要はありません。ただし退職前の給与・退職金、国民健康保険、住民税、扶養判定、ここから先がやっかいで、退職した年は確定申告で還付が出るケースの方が多いくらいです。

失業保険は所得税・住民税ともに非課税

雇用保険法第 12 条にこう書かれています。

租税その他の公課は、失業等給付として支給を受けた金銭を標準として課することができない

つまり失業保険として受け取った金額には、所得税も住民税もかからない。源泉徴収もされないので、振込額がそのまま受給額です。確定申告書の「所得」欄にも書きません。給与所得・雑所得・一時所得のどれにも該当しません。

ただし配偶者の扶養判定では「収入」扱い

ここが多くの人を混乱させるポイントです。税法上は非課税 ですが、健康保険の扶養判定では「収入」として扱われます。同じ「年収」でも見る制度によって含めるか含めないかが違う、というのが落とし穴。詳しくは後述の扶養セクションで整理します。

退職した年の確定申告

失業保険自体は非課税ですが、退職した年の給与所得については確定申告が必要なケースが多いです。

具体的には、年の途中で退職して年内に再就職していない人(年末調整が会社で済んでいない)、退職金を受け取ったときに「退職所得の受給に関する申告書」を会社に出していない人、退職後にフリーランスや副業で収入があった人、医療費控除や住宅ローン控除を申請したい人 ── このあたりは申告が必要、または申告したほうが得です。

退職年は還付が出ることが多い

年の途中で辞めた人は、所得税が 多めに源泉徴収されている ことがほとんどです。

理由は単純で、給与から天引きされる所得税は「この給与額が 1 年続いた場合」を前提に算出されているから。3 月で辞めた人の年収は 4〜12 月分が抜けるので、実際の年間所得は想定より大幅に低くなる。確定申告で年間所得を再計算すると、多く払い過ぎた分が返ってきます。

例えば月給 20 万円・3 月退職の方なら、1〜3 月の給与は 60 万円。基礎控除 48 万円と給与所得控除を引くと課税所得はほぼゼロになり、源泉徴収された数万円〜十数万円が丸ごと戻ってくる可能性があります。

必要書類

申告に必要なのは、退職した会社から受け取る源泉徴収票、マイナンバーカード(または通知カードと運転免許証などの本人確認書類)、国民健康保険料・国民年金保険料の支払証明書、生命保険料控除証明書、医療費控除を使うなら医療費の領収書、そして還付金の振込先口座の通帳。源泉徴収票は退職後 1 ヶ月以内に会社から送られてくるのが原則です。届かない場合は人事部門に督促してください。

申告期限

確定申告期間は翌年 2 月 16 日〜3 月 15 日。ただし還付申告(払い過ぎた税金を取り戻すだけの申告)は、退職した年の翌年 1 月 1 日から 5 年以内 ならいつでも受け付けてもらえます。期限を過ぎたから諦めた、という人がよくいますが、過去の還付申告なら今からでも間に合うかもしれません。

配偶者の扶養に入る場合の判定

退職後、配偶者の扶養に入るかどうか検討する人は多いと思います。ここで失業保険の扱いが非常にややこしくなります。

税法上の扶養(配偶者控除)

税法上の扶養判定は、年収 103 万円以下なら配偶者控除(38 万円控除)、103 万円超〜201 万円なら配偶者特別控除で段階的に減額。ここでは 失業保険は年収に含めません(非課税なので)。

社会保険の扶養(健康保険)

問題はこっち。年収 130 万円未満なら配偶者の健康保険の扶養に入れますが、失業保険は社会保険の年収に含まれます

判定の基準になるのは基本手当日額です。

基本手当日額扶養可否
3,612 円未満扶養 OK(年収 130 万円未満想定)
3,612 円以上扶養 NG(受給期間中)

3,612 円 × 360 日 ≈ 130 万円、という計算式から逆算した数字です。基本手当日額が 3,612 円以上の人は、受給期間中は配偶者の扶養から外れて、自分で 国民健康保険+国民年金 に加入する必要があります。

扶養の出入りのタイミング

ここも見落としやすいのですが、扶養から外れるのは 受給開始の時点 です。退職直後から受給開始までの空白期間(自己都合なら待期 7 日と給付制限 1 ヶ月)は扶養に入れます。受給開始日(給付制限明け)から外れる手続きをする、というのが正しい順番。

受給が終わったら、また扶養に戻れます。再就職して厚生年金に切り替わるまでの間は、再度扶養申請を出すことになります。

国民健康保険料の軽減措置

会社都合や特定理由離職者として認定された人は、国民健康保険料の 軽減措置 が使えます。

仕組みは「前年の給与所得を 30/100 として計算してもらえる」というもの。通常は前年所得 × 約 10%(市町村により差あり)で保険料が決まりますが、軽減対象者は前年所得を 3 割で見てくれるので、月額 1〜3 万円の軽減効果が出ます。

対象になるのは特定受給資格者(倒産・解雇など)と特定理由離職者(契約満了など)。自己都合退職者は対象外です。

申請は市町村の国民健康保険窓口で。雇用保険受給資格者証の離職理由番号が 11〜14・21〜24・31〜34 のいずれかに該当することが条件です。離職翌日の翌月から 2 年間が申請期限。

詳細は退職後の健康保険記事で扱っています。

住民税の支払い

住民税は 前年の所得に基づいて課税 されるので、退職後も支払いが続きます。ここを見落として生活費の試算をしていると、退職後数ヶ月して納付書が届いた瞬間に資金繰りが崩れます。

在職中は給与から毎月特別徴収されていたものが、退職時に残額を最終給与で一括天引きされるか、普通徴収(自分で支払う)に切り替わるかのどちらかになります。退職時期によって扱いが違います。

1〜5 月退職 — 退職月までの住民税を最終給与で一括徴収できる(会社が対応していれば)。

6〜12 月退職 — 通常は普通徴収に切替。市町村から納付書が郵送されて、4 回分割または一括で自分で支払います。

税額の目安としては、前年の年収 500 万円の方なら年間住民税は 約 25 万円。これが退職後の生活費から出ていくので、退職後の手取り計算には必ず組み込んでおきましょう。

国民年金の支払い

退職して厚生年金から外れると、国民年金に切り替わります。保険料は月額 17,510 円(令和 7 年度)、年間 210,120 円

支払いが厳しい場合は免除制度があります。

免除区分免除割合後の年金への影響
全額免除100%1/2 反映
3/4 免除75%5/8 反映
半額免除50%6/8 反映
1/4 免除25%7/8 反映
納付猶予100%0% 反映(ただし追納可)

加えて「失業による特例」もあり、前年所得ではなく 離職票 で判定してくれる制度があります。前年がフルに働いた給与所得ベースだと免除が通らないようなケースでも、失業特例なら通る可能性があります。市区町村の年金窓口か年金事務所で離職票を見せて相談してください。

退職金の確定申告

退職金は 退職所得 として分離課税で計算されます。給与所得とは別枠で、税負担が大きく軽減される仕組みです。

ここで最重要なのが「退職所得の受給に関する申告書」。退職金を受け取る前にこれを会社に提出しておけば、優遇税制が自動で適用されて、適正額の所得税だけが源泉徴収されます。

逆に出していなかった場合は、退職金額の 20.42% が一律で源泉徴収されてしまい、確定申告で取り戻すことになります。手間が一段増えるので、退職時に必ず出しておきたい書類です。

退職所得控除

勤続年数控除額
20 年以下40 万円 × 勤続年数(最低 80 万円)
20 年超800 万円 + 70 万円 ×(勤続年数 − 20 年)

勤続 15 年なら 40 万円 × 15 年 = 600 万円までの退職金は非課税。それを超えた分も 1/2 課税なので、給与所得に比べてかなり優遇されています。

計算例:退職した年の総合的な税金

35 歳・年収 500 万円・3 月退職・5 年勤続の J さんを例にします。

1〜3 月分の給与は月 40 万円 × 3 ヶ月 = 120 万円(賞与なし)。給与所得控除約 60 万円を引いて給与所得は約 60 万円。失業保険として 6,205 円 × 90 日 = 558,450 円を受給しても、これは非課税なので所得計算には入れません。

確定申告での所得計算は、総所得 60 万円から基礎控除 48 万円と社会保険料控除(退職前の天引き分+退職後の国民年金・国民健康保険)を引いていく形。課税所得は数万円〜0 円になり、源泉徴収されていた所得税の大半が還付される 可能性が高いです。

退職後 1 年間の税金カレンダー

退職後 1 年目の 6 月の住民税は前年フル勤務分なので一番重く、2 年目の 6 月から軽くなる、という流れを覚えておくと家計設計が楽になります。

あなたのケースで還付額を試算

退職時期・年収・社会保険料・扶養家族の有無を入れると、確定申告での想定還付額の目安が出せます。

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出典・参考

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