2026/05/12 更新

70歳以上で退職した場合の失業保険・年金・生活設計

70歳以上で退職する方も、雇用保険被保険者であれば高年齢求職者給付金の対象(被保険者期間1年以上で50日分の一時金)。老齢年金との併給、健康保険の選択、在職老齢年金の解除、70歳代の生活設計を整理しました。

「70歳まで現役で働いて、そろそろ本当に引退するかと考えている。失業保険ってこの年齢でももらえるの?」── 高年齢被保険者の扱いがあまり知られていないせいで、対象なのに申請せず終わってしまう方が結構います。

雇用保険料を天引きされていた方なら、70歳でも75歳でも、退職時に 高年齢求職者給付金 という一時金を受け取れる可能性があります。基本手当ではなく一時金ですが、老齢年金と止め合いにならないので素直に手取りの上乗せになります。

70歳以上の雇用保険はどうなっているか

そもそも雇用保険には年齢の上限がありません。週20時間以上で31日以上の雇用見込みがある契約なら、65歳以降に新たに雇われた人も含めて 高年齢被保険者 として加入し、保険料は本人・事業主の双方が負担します。給与明細で「雇用保険」が天引きされているなら、自分は被保険者だと考えてよいです。

75歳到達日になると健康保険のほうは後期高齢者医療制度に強制移行しますが、雇用保険は75歳以降も継続 されます。78歳の現役パートさんが退職して高年齢求職者給付金を受け取る、というケースも普通にあり得る制度設計です。

高年齢求職者給付金の支給額

計算式はシンプルです。

給付額 = 基本手当日額 × 給付日数(30 日または 50 日)
基本手当日額の上限:7,623 円(60 歳以降区分)

被保険者期間が1年未満なら30日分、1年以上あれば50日分。基本手当日額は退職前6ヶ月の総支給額(賞与除く)から算定する賃金日額に給付率(80〜50%)をかけて出します。

例えば72歳・月収25万円・5年勤続のXさんで試算すると、賃金日額は8,333円、給付率は約58%で基本手当日額が約4,800円。被保険者期間1年以上なので50日分が適用されて 240,000円 の一時金が振り込まれます。

申請から振込までは通常1ヶ月以内。基本手当のように4週ごとの認定日に通う必要はなく、求職申込み時点で受給資格が決まり、認定後に一括支給されます。

老齢年金との関係

70歳以上の方は、在職中に給与+年金の合計額が一定額(令和7年は月50万円)を超えていると、在職老齢年金で年金の一部が止まっている状態のはずです。

退職するとこの停止が解除され、満額の年金に戻ります。さらに高年齢求職者給付金は年金と併給可能なので、退職月以降は「満額に戻った年金 + 一時金」という二重の増加が起きる構造です。65歳未満で基本手当を受け取る場合は年金が止まるのとは正反対で、ここがこの年代の大きな利点になります。

健康保険の選び方

74歳までは選択肢があります。離職後すぐ働かない予定なら、国民健康保険か、配偶者・子の被扶養者になる道のどちらか。配偶者の被扶養者に入れる条件を満たすなら保険料負担がなくなる分、こちらが有利な場合が多いです。継続雇用中であれば会社の健康保険にそのまま残れます。

75歳に到達した日からは 後期高齢者医療制度 に強制加入で、選択の余地はなくなります。保険料は前年所得をベースに都道府県ごとに決まる仕組みで、医療費の自己負担は原則1割(一定所得者は2割または3割)。

70歳以降の退職判断は経済性だけでは決まらない

この年代になると、退職するかどうかは「もらえる金額」だけで決められないのが実際のところです。

健康面でいつまでフル稼働できるか、配偶者や家族と過ごす時間をどれくらい取りたいか、定年退職した友人との関係で社会的なつながりがどう変わるか ── このあたりが経済性と同じくらい重い軸になります。

経済面で見ておきたいのは3点だけ。退職時に受け取れる高年齢求職者給付金(数十万円規模)、退職後に在職老齢年金の停止が解除されて年金が満額に戻る分、要介護認定を受けた場合の介護保険サービスの利用可否です。これらを並べたうえで、健康と時間の使い方の希望に合うタイミングを選ぶ、というのが現実的な判断ステップになります。

75歳以降の特殊論点

75歳の節目で動くのは健康保険だけではありません。

介護保険は65歳から第1号被保険者になっていますが、75歳前後で要介護・要支援の認定を受ける方が一気に増えます。認定が下りれば介護サービスを1〜3割の自己負担で利用可能。地域包括支援センターでの相談が入口になります。

後期高齢者医療制度に移ると、保険証も新しいものに切り替わります。退職と同時に75歳到達という方は、雇用保険の手続き(高年齢求職者給付金の申請)と健康保険の切り替えが重なるので、ハローワークと市区町村の窓口を1週間ずつくらいズラして進めると体力的に楽です。

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